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精選 金融判例解説 金融実務の観点から

実務上の影響という観点から重要な意義を有する23の裁判例を、実務家の立場から鋭く解説。
精選 金融判例解説 金融実務の観点から
著者:
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 金融判例研究会/著 
判型:
A5判
ページ数:
488頁
発刊年月:
2013年2月
定価:
5,184円 (税込)
ISBN/ISSN:
978-4-8178-4018-9
商品コード:
40474
略号:
金融判例
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商品情報

【刊行に寄せて】
 アメリカには『法律事務所』と題する小説もあり,映画化されてもい
る。そこで描かれている世界は,いわゆる通常のビッグ・ロー・ファーム
とは似て非なるものであるが,それはともかく,日本の読者は,日本の4
大事務所等とよばれる大きな法律事務所の実態をどこまでご存じだろう
か。弁護士だけで300〜400人の人員を要する大事務所は,法的には組合と
いう形態をとってはいるが,外からは一大企業の観もなくはない。
 私は,ながらく法律学者を職としてきたが,数年前,縁あっていわゆる
4大事務所の一つ,アンダーソン・毛利・友常法律事務所に籍を置くこと
となった。そこでの仕事をするかたわら,事務所の「金融判例研究会」そ
の他の研究会にも顔をだすようになった。法律学者としても,相当数の判
例研究を行ってきたし,現在も,現代民事判例研究会という判例研究会を
主宰する立場にある。だが,事務所の研究会に顔をだすと,これまで研究
者仲間と行ってきた判例をめぐる議論とはかなり様相が異なる論議が交わ
されることが少なくない。
 ある日,錯誤が論じられたときのことである。弁護士の先生方は,“こ
れは,認められるはずのない主張ですから”という一言のもとに次の論点
に進む。民法学においては,錯誤は一大論点であり,この点の教育に割く
時間もけっして少なくはない。また,私自身は,動機の錯誤論を否定す
る,三層的法律行為論という新理論を唱えている立場でもある。あまりに
も軽い錯誤の取り扱いに驚いた私は,“錯誤をそんなに軽く扱っていいん
ですか”と議論の進行に異議を唱えた。それに対する答えは,“詐欺事案
で,裁判所が詐欺という強い言葉を使うことを避けて,錯誤無効で処理し
たりはしますが,これは,純粋の錯誤事案です。裁判所は,通常の錯誤は
あまり認めたがりません。”“認めてしまうと,錯誤に陥ったほうはいいで
すが,相手方はたまったものではなく,取引の安全が害されますからね。
とくに,過失で錯誤に陥ったような場合には,そのような当事者を保護す
るのは,実務感覚からはぴんとこないのですよ”というものであった。
 講学上は重要な論点でも,実務的にぴんとこなければ,使われない。道
理としては当然のことであるが,学者の書いたものには,このような感覚
はでてきにくい。ドイツ民法は,一方で,錯誤者の救済をはかりながら,
同時に,錯誤者に損害賠償義務を認めているが,その手のバランス感覚を
欠く日本民法の錯誤は,実務上,軽視されるという憂き目にあっていると
いう実態を,その日はじめて私は知ることになった。
 また,事務所の研究会での議論では,まだ裁判例にも現れていない最先
端の取引の話が頻繁にでてくる。いろんな意味で,実務家による判例研究
と,研究者による判例研究との違いを感じさせられる経験を私は積み重ね
ることとなった。
 そのような折,日本加除出版の編集者の朝比奈さんが私を訪ねてきた。
雑談で,新たな執筆者の紹介を頼まれたので,何人かの人を紹介したが,
その際,頭に浮かんだのが,事務所での研究会の成果を世に問うというこ
とであった。早速,事務所で“アドミ”とよばれている,その当時のアド
ミニストレーション担当パートナーの森下先生に話をしてみた。それが端
緒となり,事務所でも出版企画が持ち上がり,日本加除出版のほうも乗り
気となり,2年間の判例研究期間とその後の執筆期間を経て誕生したのが
,本書,『精選 金融判例解説−金融実務の観点から』である。はからず
も企画の産婆役を果たすこととなった私にとっても,本書の公刊は大きな
悦びである。
 本書の各章の執筆は,チーム・ワークとして行われた。まず,入所して
比較的日が浅いジュニア・アソシエイトと何年かの経験を積んだシニア・
アソシエイトが1組となり,ジュニア・アソシエイトがたたき台となる研
究会報告原稿をつくり,シニア・アソシエイトがそれに手を加えつつ,共
同原稿を作成したうえで,金融判例研究会での正式報告の運びとなる。そ
の研究会での議論を受けて,日本加除出版の出版誌,『民事研修』の掲載
原稿の執筆がはじまる。研究会での議論を踏まえつつ,2人が書いてきた
共同原稿の雑誌掲載原稿第1次稿に対し,パートナー数名を含む編集会議
での“教育的指導”が行われ,2人は,それをも踏まえて雑誌掲載原稿第
2次稿を完成させる。その第2次稿から先に目を通すのが私の仕事であ
る。執筆してきた2人,ときにはその2人を指導してきたパートナーをも
含めて,第2次稿を前に,徹底した議論を繰り返す。なかには,議論の機
会を2回もつくらいの書き直しで,雑誌の完成原稿になった例もあるが,
数回にわたって議論を繰り返し,数回目の原稿が完成原稿になったものも
少なくない。40年近く,助手院生の指導にあたってきた私であるが,元原
稿をもってくる若手弁護士のなかには慧眼の士も少なくなく,雑誌掲載原
稿をめぐる議論をすることは,私にとっては非常に楽しい仕事となった。
 そして,2年間にわたる雑誌連載の後,本書執筆のための編集作業が執
り行われた。編集を担当したのは,森下国彦弁護士,久山亜耶子弁護士,
馬場健太弁護士の3名である。以上に述べたところからわかるように,本
書に執筆者として名を連ねるのは45名であるが,ここに書かれた内容に
は,アンダーソン・毛利・友常法律事務所で金融法務等に携わっている数
十名の弁護士の叡智が反映されている。このような本書が,法曹界にとっ
ても,金融界にとっても,そして学界にとっても,資するところが大きい
ことを願いつつ,「刊行に寄せて」のペンを擱くこととしたい。

平成25年1月
                    上智大学教授・弁護士
                             加藤 雅信

●重要な意義を有する近時の裁判例を紹介・解説。
●金融法務に携わる実務家に求められる、民法をはじめとする基本法の正確な理解を助ける一冊。
●初任者の理解促進を考慮し、複雑な法律関係は図表を用いて解説。用語解説も随所で掲載。
●金融取引の実務において再検証が必要と思われる問題点に関する、金融取引案件を主に取り扱う弁護士による座談会を収録。
●事項・判例索引により、知りたい情報を容易に検索可能。


■収録内容
【判例評釈】
●銀行取引実務をめぐる判例の動向
 ・融資判断における銀行取締役の責任
 ・銀行作成の自己査定資料と職業上の秘密
 ・預金口座の取引経過の開示 ―共同相続事案をめぐって
 ・原因関係のない振込みと払戻請求 ―盗難通帳預金解約金の振込みをめぐって
 ・銀行の支払拒絶をめぐる法的責任
●倒産をめぐる金融実務
 ・信託財産となる預金債権の破産財団への帰属時期
 ・倒産解除特約の効力 ―ファイナンス・リースをめぐって
 ・停止条件付債権譲渡担保と否認権の行使
 ・保証人が代位取得した債権と民事再生手続き
 ・手形取立金の銀行取引約定書に基づく当座貸越債権への弁済充当の効力 ―民事再生をめぐって
●担保法の動向
 ・根抵当権における被担保債権の範囲の定め方
 ・金融債を受働債権とする相殺の可否
 ・所有権留保における所有名義者の責任
 ・代理受領を承諾した第三債務者による相殺 ―相殺の可否、債務不履行・不法行為の成否
 ・担保不動産収益執行の構造と相殺の意思表示の相手方
●債権法・民事法の諸問題
 ・詐害行為取消権の限界事例 ―連帯債務者が存在し、かつ、物的担保が存した場合
 ・保証人の事前求償権と消滅時効
 ・不当利得返還義務の対象が代替物であり、それが売却された場合の不当利得返還義務の内容
 ・不当利得における「悪意の受益者」 ―過払金返還請求訴訟を契機として
 ・過払金返還請求権の消滅時効の起算点
 ・投資信託の共同相続と解約請求
 ・投資法人による募集投資口の発行の差止め ―「資産の内容に照らし公正な金額」の意義及び差止めの方法
 ・権利能力のない社団の総有不動産に対する強制執行の方法 ―第三者名義の場合

【座談会:法律家からみた金融実務の動向】
(出席者)
 アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士
  片山 達
  永井和明
  高橋玲路
  森下国彦(司会)

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