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新・アジア家族法三国会議

−第6回会議 台湾−
日 時:2016年11月26日(土) 9:30〜17:00

会 場:輔仁大学
    台湾新北市新荘区中正路510号

テーマ:「親子関係の決定―血縁と意思」

 親子関係は、一般の財産法律関係と異なり、「愛」と「血縁」を基礎とする生活関係である。日本・韓国・台湾においては、現行の法制により、養子縁組関係のほかに、一般に親子関係が成立するためには、嫡出の推定・非嫡出子の認知・準正・配偶者間の合法的人工生殖による出生などがその主要な方法であると定めている。そして、親子関係の存否は、親子間の扶養・相続などの権利義務に関わり、「児童の権利に関する条約」に基づき、親子間の生活関係が、子の利益のためにあるべきであるという理念を原則としなければならない。そこで、いかに親子関係に関わる規定を強化すべきかは、現在もっとも重要な課題である。
 まず、嫡出の推定の部分について、日本の民法によると、夫だけが、子が嫡出であることを否認することができ、子とその母は、嫡出否認の訴えを提起することができないとしている(同法774条)。そして、日本の最高裁大法廷において2015年12月16日、民法に定めた再婚禁止期間について離婚から100日を超えた部分が憲法違反であるとの判決が出た。これによって女性の再婚禁止期間が緩和されるといえども、先進国では唯一日本のみにある、女性だけに設けられた制限であるから、性差別の問題やDNA鑑定等の医科学進歩を遂げた現代には時代遅れの足枷であるという世論も喚起されている。
 これに対して、韓国では2005年、女性の再婚禁止期間を撤廃した。そして、夫のみならず、子の母にも嫡出否認権を認めた。しかし、子はやはり嫡出否認の訴えを提起することができないから、子に出自を知る権利は認められないとしている(韓国民法846条)。そして、韓国の憲法裁判所は、2015年4月30日、「婚姻成立の日から200日後又は婚姻関係終了の日から300日以内に出生した子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」と定めている韓国民法844条2項のうち、「婚姻関係終了の日から300日以内に出生した子」の部分について憲法不合致決定をした。このように、日本と韓国では、現行法の下で、嫡出推定の問題がおおいに注目されつつある。
 上述した日本と韓国の状況に対して、台湾では1985年にすでに子の母に嫡出否認権を認めており、1998年に女性の再婚禁止期間を撤廃した。さらに2007年に嫡出否認の訴えに関する提訴期間と提訴要件を緩和して、夫と子の母のみならず、子にも嫡出否認権を認めるようになり、これによって、親子関係を真実の血縁に一致させている。しかし、日本・韓国と異なり、台湾の現行法では、死亡した子が直系卑属を有する場合であっても、死亡した子を認知することができないので、その直系卑属の扶養権益を確保していないという問題が残っているのである。
 ところで、人工生殖について、台湾では2007年にすでに人工生殖法を新設し、妻の子宮による妊娠を前提としつつ、配偶者間の合法的な人工生殖を認め、これによって出生した子を嫡出子とみなすとしている(同法23条ないし25条)。さらに、卵子・精子の提供という配偶者間の同意が詐欺・脅迫による場合を除いて、原則としてその子を否認することができないとし、その子が卵子・精子の提供者に強制認知を請求することもできないとする規定を定めて、人工生殖による親子関係の紛争を解決するのである。社会の急速な変化と複雑化および医学技術の高度発展に伴って、人工生殖または代理出産という方法により成立した親子関係に関する問題について、いかに子の利益・父母の利益・提供者の利益および子の出自を知る権利を守るべきかは、日本・韓国・台湾3国にとって避けてはならない課題である。
 以上のように血縁を重視する場合に対して、日本の裁判所では、戸籍上の父母とその嫡出子として記載されている者との間の実親子関係について父母の子が親子関係不存在確認請求をすることが権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた判例(最高裁平成18年7月7日判決)が出された。台湾でも最近、血縁の真実に反した無効な認知について、1985年民法改正前の養子縁組をするためには、裁判所の許可を必要としないと定められたので、他人の子を幼い時から育て、かつ自分の子として身分登記をしたような場合には、これを有効な養子縁組関係に転換することができるとする判決(最高裁102年度台上字第2301号民事裁判)が出された。これらの裁判の実務においては、身分関係の安定性を重視する傾向が見られるのである。
 これについて、ドイツ民法によると、身分登記の日から5年を経過した無効な認知は、これを有効とする(同法1598条)。また、フランス民法によると、親子関係の提訴期間は、当事者が請求する身分を奪われた日から10年、または争われている身分を享有し始めた日から10年を経過した後は、原則これを提訴することができないとする(同法321条)。以上の考察によって、親子関係の問題を扱うには、いったい当事者間の血縁を重視すべきなのか、または当事者間の意思を重視すべきなのか、換言すると、身分関係の真実性と安定性をいかに調和すべきか、ドイツとフランスのような身分占有制度を導入すべきかについて、日本・韓国・台湾3国ともに解決策を考える。

申込書はこちら第6回新・アジア家族法三国会議申込書

新・アジア家族法三国会議
昭和58年より26年にわたり開催をしてきた「アジア家族法三国会議」をさらに発展させた学術会議を平成23年より始動。
日本、韓国、台湾を中心にアジアにおける家族法諸問題の著しい変化と、関連する法制度をめぐる動きと課題を探り、学界と実務に寄与する研究報告とシンポジウムの開催を支援しています。
企画・運営委員会(会議コーディネイター)
日本棚村 政行(早稲田大学教授)
小川 富之(福岡大学教授)
韓国申 榮 鎬(高麗大学校法学専門大学院教授)
禹 柄 彰(淑明女子大学校教授)
台湾林 秀 雄(輔仁大学教授)
 學 仁(中央警察大学教授)
開催年月日、場所、テーマ
第1回2011(平成23)年11月27日 早稲田大学小野記念講堂(東京)
戸籍と身分登録制度
1.シンポジウム「戸籍と身分登録制度」―問題提起
   棚村 政行(日本・早稲田大学)
2.日本の戸籍制度の沿革と家族法のあり方
   水野 紀子(日本・東北大学)
3.日本の戸籍制度の改正と今後の課題
   小池 信行(日本・弁護士)
4.台湾における戸籍登記制度と家族法の改正
   林 秀 雄(台湾・輔仁大学)
5.台湾戸籍法における身分登記の問題点と課題
    學 仁(台湾・中央警察大学)
6.韓国における身分登録制度の改変と課題
   文 興 安(韓国・建国大学校)
7.韓国の新しい協議離婚制度と家族関係登録制度
   安 甲 濬(韓国・漢陽大学校)
8.グローバル化と戸籍制度―渉外戸籍と国際私法との関連で
   南 敏文(日本・東京高等裁判所)
9.スイス身分登録令,オーストリア身分登録法
   松倉 耕作(日本・名城大学)
10.シンポジウム「戸籍と身分登録制度」
   司会:小川富之(日本・近畿大学)、棚村政行(日本・早稲田大学)
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第2回2012(平成24)年11月24日 高麗大学校新法学館(ソウル)
親権と未成年後見
1.親権法と未成年後見法の現況と改正動向
   禹 柄 彰(韓国・淑明女子大学校)
2.子の福利と親権法の課題
   金 由 美(韓国・蔚山大学校)
3.親権制限の柔軟化・弾力化―身分的効力を中心として
   李 垠 廷(韓国・慶北大学校)
4.親権と未成年後見との関係
    寅 九(韓国・ソウル家庭法院)
5.児童虐待と親権・未成年後見
   鄭 求 兌(韓国・朝鮮大学校)
6.国際親権・後見法の動向と国内立法課題
   石 光 現(韓国・ソウル大学校)
7.台湾における親権と未成年後見―渉外親権法及び後見法を兼ねて
   林 秀 雄(台湾・輔仁大学)
8.子の福利と親権法の課題
    學 仁(台湾・中央警察大学)
9.親権法と未成年後見の現況と課題―子の福利と親権法の課題
   岩志 和一郎(日本・早稲田大学)
10.児童虐待と親権・未成年後見
   棚村 政行(日本・早稲田大学)
11.親権と未成年後見の関係
   小川 富之(日本・近畿大学)
12.シンポジウム「親権と未成年後見」
   司会:申 榮 鎬(韓国・高麗大学校)(通訳:金 亮 完(日本・山梨学院大学))
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第3回2013(平成25)年11月30日 輔仁大学野聲樓(台湾新北市)
成年後見制度
1.シンポジウム「成年後見制度」―問題提起
  林 秀 雄(台湾・輔仁大学)
2.成年後見制度の導入と改正の経緯
  小池 信行(日本・弁護士)
3.成年後見制度の概要と特色
  赤沼 康弘(日本・弁護士)
4.成年後見制度をめぐる今後の課題
  新井 誠(日本・中央大学)
5.成年後見制度の導入と改正経緯
  申 榮 鎬(韓国・高麗大学校)
6.法定後見制度
   寅 九(韓国・ソウル家庭裁判所判事)
7.韓国成年後見制度の周辺と今後の課題
  諸 哲 雄(韓国・漢陽大学校)
8.台湾の成年後見制度の導入と改正経緯
   學 仁(台湾・中央警察大学)
9.成年後見制度の概要と特色
  黄 詩 淳(台湾・台湾大学)
10.成年後見制度に関連する制度と今後の課題─公示、信託と保険制度を中心に
  邱 ○ 如(台湾・台湾台北高等法院法官) ※○は"王"+"睿"。
11.シンポジウム「成年後見制度」
  司会:林 秀 雄(台湾・輔仁大学)
  (通訳:田中 佑季(日本・慶應義塾大学)、黄 浄 愉(日本・北海道大学)、小林 貴典(台湾・政治大学))
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第4回2014(平成26)年11月29日 早稲田大学大隈記念講堂小講堂(東京)
家事事件処理手続の改革―日本・韓国・台湾
1.シンポジウム「家事事件処理手続の改革―日本・韓国・台湾」―問題提起
  棚村 政行(日本・早稲田大学)
2.家事事件手続法制定の経緯と意義
  山本 和彦(日本・一橋大学大学院)
3.家事事件手続法の実務と運用上の課題
  近藤 ルミ子(日本・元東京家庭裁判所所長代行、大東文化大学)
4.家事事件手続法の理論と今後の理論的な課題
  本間 靖規(日本・早稲田大学)
5.韓国における家事訴訟法の改正動向と主要内容
  金 元 泰(韓国・忠北大学校)
6.家事訴訟法の実務および運用上の課題
  金 允 貞(韓国・ソウル家庭法院)
7.韓国の家事訴訟法の理論と今後の理論的な課題
  金 演(韓国・慶北大学校)
8.台湾の家事事件法の概要と特色
   學 仁(台湾・中央警察大学)
9.台湾家事事件法の実務と運用上の活用
  陳 宗 賢(台湾・台中地方法院家事庭)
10.台湾における家事事件法の理論と今後の理論的な課題
  何 佳 芳(台湾・東呉大学)
11.シンポジウム「家事事件処理手続の改革―日本・韓国・台湾」
  司会:棚村 政行(日本・早稲田大学)
  (通訳:金亮完(日本・山梨学院大学))
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第5回2015(平成27)年12月12日 東亜大学校富民キャンパス(釜山)
高齢者の離婚と財産問題
1.韓国の高齢社会における離婚と財産分割
  朴 仁 煥(韓国・仁荷大学校)
2.高齢者離婚と実務上の問題
  朴 寶 英(韓国・法務法人正人弁護士)
3.熟年離婚と高齢者福祉
  宋 効 珍(韓国・韓国女性政策研究院)
4.台湾における高齢者離婚の現状及び民法上の対応
  黄 浄 愉(台湾・輔仁大学)
5.台湾における高齢者の離婚及び財産分与―実務から見た状況
  伍 偉 華(台湾・苗栗地方法院)
6.台湾における高齢者の離婚後への福祉・支援
  陳 明 楷(台湾・輔仁大学)
7.高齢者の離婚と財産問題
  南 方  暁(日本・創価大学)
8.家庭裁判所にあらわれた高齢者の離婚事件等の諸相
  松原 正明(日本・早稲田大学、元横浜家庭裁判所)
9.日本の高齢者の離婚後の生活と社会保障制度
  本澤巳代子(日本・筑波大学)
10.シンポジウム「高齢者の離婚と財産問題」
  司会:金 敏 圭(韓国・東亜大学校)
  (通訳:金亮完(日本・山梨学院大学)、曲曉罅粉攅顱ε谿‖膤惺察)
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【アジア家族法三国会議】※現在は、「新・アジア家族法三国会議」として、リニューアルし、運営されています。

昭和57年に開催したアジア家族法9か国(フィリピン・タイ・マレーシア・シンガポール・インドネシア・オーストラリア・台湾・大韓民国・日本)会議を母体としてスタートしたアジア家族法会議は、翌年から家族法制が類似する日本・大韓民国・台湾の研究者が集い、婚姻・離婚・親子の問題や相続の問題など、家族法を中心にテーマを定めて平成21年まで26年にわたり、討議・研究を行っています。
開催年月日、場所、テーマ
第1回 1983年(昭和58年)9月18日(熱海・起雲閣)
「家族法改正と将来の動向」 
第2回 1986年(昭和61年)3月19日(台中・東海大学)
「家族法と男女平等」
第3回 1987年(昭和62年)2月15日(釜山・極東ホテル)
「親子関係―弱者保護」
第4回 1988年(昭和63年)4月6日(東京・霞友会館)
「家族法の改正」
第5回 第5回1989年(平成元年)11月11日(東京・日本大学)
「相続分の実質的公平」
第6回 1991年(平成3年)3月17日(台北・台湾大学法学院)
「協議離婚」
第7回 1992年(平成4年)10月17日(東京・日本出版クラブ会館)
「事実婚」
第8回 1993年(平成5年)10月16日(ソウル・高麗大学校)
「離婚原因」
第9回 1995年(平成7年)11月12日(台北・最高法院)
「家族法の変遷と課題」
第10回 1996年(平成8年)10月12日(東京・霞友会館)
「婚姻の解消と子どもの保護」
第11回 1997年(平成9年)10月18日(済州島・新羅ホテル)
「成年後見―高齢者保護」
第12回 1998年(平成10年)10月18日(台北・政治大学)
「遺留分制度」
第13回 1999年(平成11年)9月25日(北海道・苫小牧駒澤大学)
「戸籍と身分登録」
第14回 2000年(平成12年)10月21日(釜山・釜山大学校)
「離婚―その原因と財産問題」
第15回 2001年(平成13年)11月10日(台北・台湾大学法学院)
「親族の範囲と効果」
第16回 2002年(平成14年)11月30日(東京・ダイヤモンドホテル)
「親権・監護法の現状と課題」
第17回 2003年(平成15年)10月25日(大田・ホテルスパピア)
「婚姻外関係とその法律問題」
第18回 2004年(平成16年)11月20日(台北・公平交易委員会会議室)
「親子関係の確定」
第19回 2005年(平成17年)11月5日(京都・ホテルオークラ)
「家庭紛争への司法的関与と家事事件処理手続」
第20回 2006年(平成18年)11月4日(東京・ホテルオークラ)
「家族法における財産問題の動向」
第21回 2007年(平成19年)10月27日(ソウル・高麗大学校)
「養子法の現在と未来」
第22回 2008年(平成20年)11月22日(台北・世新大学)
「遺言」
第23回 2009年(平成21年)11月21日(東京・日本大学)
「家族法改正への提言」
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