TOP > 単行本書籍 > 家族法・家事事件 > 成年後見 > 成年後見における死後の事務

商品詳細

成年後見における死後の事務 事例にみる問題点と対応策

成年後見における死後の事務 事例にみる問題点と対応策
著者:
松川正毅/編 
判型:
A5判
ページ数:
288頁
発刊年月:
2011年2月
定価:
3,024円 (税込)
ISBN/ISSN:
978-4-8178-3903-9
商品コード:
40419
略号:
*死後事
在庫なし
お気に入りに追加

商品情報

パンフレットPDF

●預金の払戻し、病院費用の支払、葬式費用、後見人等に対する報酬、後見の終了と遺言執行、財産の引渡しなどのテーマ別に、問題点と対応策がわかる事例とQ&Aを収録。
●諸外国における成年後見と死後事務についても解説。


日本司法書士会連合会、(社)成年後見センター・リーガルサポート 推薦

【推薦のことば】
 新しい成年後見制度が2000年4月に施行され,11年が経とうとしています。
成年後見制度とは,自己決定権の尊重とノーマライゼーションを基本理念とし,認知症高齢者や知的障害者,精神的障害者等の判断能力の不十分な方々の権利擁護を図ることを目的とするものです。
 現在,日本は65歳以上の高齢者の割合がおよそ4.5人に1人という超高齢社会を迎えており,それに比例して成年後見制度の利用者数も年々増加の一途を辿っています。また同時に,核家族化,親族関係の希薄化により,親族以外の第三者が成年後見人となる「後見の社会化」も急速に推し進められています。
 日本司法書士会連合会では,成年後見制度が施行された当初から,制度の趣旨に則り,高齢者や障害のある方々が地域の中で人間らしく平穏な生活ができるよう,成年後見人等の担い手として活動してまいりました。そして,現在では,親族以外の第三者が成年後見人等として選任される者のうち,司法書士の割合が最も高くなっています。
 私たち司法書士が,成年後見制度の普及と発展に,その一翼を担ってくることができましたことは大変喜ばしく思います。しかし,その一方で,この10年の間に,成年後見人等として活動する中で,成年後見制度の運用や制度における問題点等が明らかになってきております。
 なかでも,成年被後見人等が死亡した後の後見人等の事務に関する問題は,避けては通れない問題です。被後見人等が死亡すると,後見等は終了し,原則的に成年後見人等の権限は消滅して,後は応急処分義務が残るのみです。しかし,現実の問題として,後見等の終了から相続人への財産承継までの間には,成年後見人等であったときと同じように,周囲から様々な対応を求められることが多くあります。これらは親族が後見人等である場合にはあまり問題になりませんでしたが,「後見の社会化」により第三者後見人等が増加してきたことによって顕在化してきたものであり,大変悩ましい問題です。
 日本司法書士会連合会では,大学提携事業として,大阪大学大学院高等司法研究科の松川正毅教授と,成年後見の実務経験豊富な司法書士が集い,成年後見制度の発展に寄与することを目的として,成年後見制度研究会を立ち上げました。そして,この研究会では,成年後見における様々な問題について,多くの研究を重ねてまいりました。
 本書は,成年後見制度研究会において,「成年後見における死後の事務」を取り上げ,研究された成果をまとめたものです。成年被後見人等が死亡した直後に直面する様々な状況を事例として紹介し,その中から実務において問題となる点を挙げ,対応策を出すにあたって必要となる法的な考え方を詳細に解説しております。
 本書は,成年後見の実務を行う上で必ず直面する「死後の事務」の問題について,真正面から取り組んだ唯一の書籍です。第三者後見人等への需要と期待が高まる今日,本書が成年後見人等の実務に役に立ち,ひいては更なる成年後見制度の普及と発展につながることを心より願っております。

 2011年2月
日本司法書士会連合会
会長 細 田 長 司

【発刊に寄せて〜悩める後見人の行く手を照らす灯りに〜】
 ご本人の死亡によって後見は終了し,「後見人」は「管理の計算」(民法870条),「後見終了の登記」(後見登記法8条1項)の職務と「応急処分義務」(民法874条の準用による654条)を残すのみとなります。
 しかし,ご本人の死亡直後から「遺体の引取り,火葬,埋葬」,「葬儀,法要,永代供養」,「本人の生前にかかった医療費,入院費,施設費,公共料金等の支払」等の事務に次々と直面し困惑することになります。
 ご本人の生前は,ご本人の最善の利益を考えて「身上監護」,「財産管理」の事務に誠実に取り組んできた「後見人」が,後見終了により「権限がなくなりましたのでそれには関与できません」ということで良いのでしょうか,反面,差し迫った事情がある場合に「遺体の引取りと火葬までは行う義務がある」のでしょうか,「事務管理(民法697条)として医療費等を支払うべき」でしょうか,と法定相続人の立場にはない「第三者後見人」としては,不安を抱えながら何とかケースごとに対応をしてきました。
 今般,日本司法書士会連合会の大学提携事業として,松川正毅大阪大学教授と関西を中心とした成年後見実務の経験豊富な当法人所属の司法書士等とで構成される成年後見制度研究会において「成年後見における死後の事務」について研究を積み重ねられた成果として,法律上・実務上の問題点を網羅した本書を発刊されることは正に時宜を得たものであり,悩める後見人にとってその行く手を照らす灯りとなるものと敬意を表するものです。
 さて,平成12年4月1日に「禁治産・準禁治産制度」に代わる新しい制度として現行「成年後見制度」が施行されてから11年が経過しようとしております。
 同日に施行された「介護保険法」と,その後施行された「障害者自立支援法」によって,福祉サービスの利用方式が「措置から契約」へ変わったことを受け,自分の判断で契約を結ぶ能力に不安のある方々の間に成年後見制度利用の必要性が高まりました。
 しかし,現行成年後見制度の利用件数は毎年増加しているとはいえ,後見登記の統計からみて平成22年3月までの総件数は約20万4,000件に留まっている状況にあります。
 これまで成年後見制度の円滑な利用を阻害している要因について「親族申立人の不存在」,「利用費の負担」,「担い手不足」等各界で様々な議論がなされそれらの改善提言がなされております。そして,その議論の中で重要な課題として,成年後見人が後見事務を行うに当たり困惑したり迷ったりしている「本人死亡後の事務処理」が取り上げられております。
 この課題は,現行成年後見制度が「後見の社会化」の一つとして,親族以外の「第三者後見人」の選任を可能とし,その選任率が平成21年には約37%(平成12年度は約10%弱)と年々増加する傾向にある中で顕在化してきたものといえます。
 さる平成22年10月2日から4日までの3日間「2010年成年後見法世界会議」が当法人も共催団体として世界16の国と地域から約500名の参加を得て「パシフィコ横浜」(横浜市)で開催されましたが,その最終日に,成年後見制度が果たすべききわめて重要な意義と役割を改めて確認し,成年後見制度の適切な利用を広く世界に訴えるために参加者全員で「横浜宣言」を採択いたしました。
 今後,この「横浜宣言」をもとに本書で提起された「死後の事務」の課題を含め,現行成年後見法の改正とその運用の改善に向けて関係各方面において検討がなされていくものと考えております。
 これまで以上に国民が利用しやすい成年後見制度として普及し利用が図られることを祈念し本書の推薦の言葉といたします。

 2011年2月
社団法人成年後見センター・リーガルサポート
理事長 芳 賀  裕

【はしがき】
 平成11年に後見に関する民法典の規定が改正されて,10年以上の年月が経過した。しかしながら,平成11年の改正では,第三者が後見人になることを前提とした法律の整備は,必ずしも十分ではなかった。平成11年の改正後,日本は急速に高齢時代に入り,第三者とくに法の専門家がなす後見の重要性がますます高まっている。
 かつては,推定相続人の1人が後見人となることが多かった。被後見人の死亡とともに,相続人がその財産を包括承継するので,後見と相続を一連のものとして理解することができた。ここでは,後見の終了に関して,相続人としての立場で事務をすればよく,別段法的な問題が生じることはなかったのである。
 しかし,専門職後見人のように第三者が後見人になれば,被相続人の死亡により後見は終了し,被後見人の財産は相続人が承継することになる。後見人の法的地位は,被後見人の死後に,必然的に相続人に及んでいかない。ここに,理論上の問題が山積している。第三者後見人の避けては通れない実務上の難問が,被後見人の死亡とともに具体的に現れてくる。
 例えば,被後見人の死亡後は,誰に財産を引きわたせばよいのだろうか。 施設の費用,病院費用の支払は,相続債務となり後見人はもはや支払ってはならないのだろうか。被後見人の死に直結した費用の支払などに関して,「死後の事務」として特別の考え方が必要になろう。そして,相続債務ではなく,承認放棄などの相続人の選択の対象とならない費用という位置づけが必要になるかもしれない。
 後見には,一方で,死後の事務として行いうるものがある。このことの認識を持つことの重要性を本書で明らかにしたいと思っている。また他方で,死後事務が必要だという要望や意識の下に,無制限に含めていくことは,相続法の規定とも抵触し,避けなければならないことを知ることも大切である。
本書の読者には,「死後の事務」に含めてよいと考えうるものが見えてくると思う。 後見と死後の事務に関して,実務経験豊かな司法書士の現場の悩みを出し合い,法的な観点からの議論,分析をする研究会を平成18年10月から重ねた。
現場の真摯な問題意識が本書を世に送り出したのである。問題指摘のみならず,法解釈や立法のあしがかりとなればとの思いは筆者全員に共通している。
 多忙の日々の中から,時間を見つけ出し,研究会に参加し,本書のために,論考の執筆の労をとられた先生方に感謝申し上げたい。また,冷水登紀代・甲南大学法科大学院准教授と宮本誠子・金沢大学大学院法務研究科准教授の研究会運営から本書の公刊に至るまでのご尽力と,日本加除出版の有能な編集者である金野崇之氏と牧陽子氏の力強いご支援に,こころからお礼申し上げたい。

 2011年2月
大阪大学大学院高等司法研究科教授
松 川 正 毅

関連する好評図書はこちらです。