児相で何が起きているのか?
日々生じる問題と法的対応を132事例で解説!
【著者紹介:久保健二】
平成23 年4 月から全国初の児童相談所常勤弁護士(特定任期付職員)として福岡市こども総合相談センターに着任。平成28年4月から一般職員として同センターのこども緊急支援課(※緊急に虐待対応を担当する課)課長に就任。平成28 年7 月からは厚生労働省が設置した「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」の構成員も務める。
<児童福祉法・児童虐待防止法 平成29年改正に対応した改訂版!>
◆改正の概要
1)虐待を受けている児童等の保護者に対する指導への司法関与
2)家庭裁判所による一時保護の審査の導入
3)接近禁止命令を行うことができる場合の拡大
◆追加事例
●接近禁止命令
高校生が親から虐待を受けたことを理由として一時保護されたものの、学校を長期に休むと進学に影響するため一時保護所から通学したり、親族宅に一時保護委託されて、そこから通学したりすることがありますが、通学路や学校で親の連れ戻しが心配されることがあります。
●里親委託等の解除
里親委託等を解除する際、その根拠条文について悩むことがあります。
●審査請求がなされたとき
保護者等が子どもを一時保護されたことなど児童相談所の行政処分に不服だとして、審査請求をすることがあります。その際、児童相談所が提出する弁明書にどの程度記載すべきか悩むことがあります。
●ぐ犯の審判に付すべき事由
幼少期の虐待の影響により、思春期ごろから不良行為を繰り返すようになり、子ども福祉の枠内では対応することが難しくなり、少年法の定めるぐ犯少年として家庭裁判所に送致することがありますが、審判に付すべき事由の起案に悩むことがあります。
●単身親の死亡後の手続への関与
里親に委託されている子ども(小学生)の親が死亡したとの知らせが児童相談所に入った後、遺産の整理や遺族年金の受給などの手続に関与することがあります。
●虐待を行った親からの接触の制限
虐待を受けた子どもが自立するに当たって、虐待をなした親との関係を断ち切るため、その居場所も親に知られないようにすることを希望することがあります。
実例を基にした132事例を収録!
<事例抜粋>
●一時保護を行うべきか否かについて、現場では判断に悩むことがあります。
●一時保護を行う場合、子どもを確実に、しかも安全に保護するために、子どもが保護者と離れている場面で行うことが少なくありません。
●一時保護中に父や母が子どもとの面会を強く求めてくることがありますが、これに対して、児童相談所が指導として面会を拒絶することが少なくありません。
●一時保護中の子どもを保護者の下に外出や外泊をさせたところ、保護者が子どもを一時保護所に戻さないことがあります。
●親が子どもにつき施設入所措置には同意する意向を示すものの、里親委託措置には反対することがよくあります。
●子どもが里親委託や施設入所中に、親権者変更がなされ、親権者となった親が子どもの引き取りを要求してくることがあります。
●里親委託中の子どもが里親所有の物を壊してしまったとき、その補償をどのようにするのか困ることがあります。
●泣き声通告を受け、子どもの安全確認のため家庭訪問すると、周囲から虐待していると思われていることに、親がショックを受けたり、子育てに悩んでいる親がさらに悩みを深めたりすることがあります。
●同じ家庭について何度も通告があったり、通告後の調査結果の報告を求められたりすることがあります。
●地域などから、「いつもコンビニ弁当ばかりで、ちゃんと食べさせていない。」、「いつも子どもを放ったらかしにしている親がいる。」、「こんな親に子どもを育てさせたら子どものためにならないから子どもを一時保護すべきだ。」との通告や情報提供がなされることがあります。
●学校から通告を受けた際、通告したことや、子どもがけがをしているなどの通告内容すら保護者に伝えないように求められることがあります。
●けがをして病院を受診した子どもについて、虐待の疑いはないものの、病院が児童相談所等に対して情報提供することがあります。
●子ども虐待の通告後の調査において、保護者が代理人として親族や知人を介入させようとしたり、それらの者が保護者との面接に同席することを要求したりすることがあります。