氏戸
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第1001 氏の変動と戸籍の変動はリンクしています。すなわち,氏が変動すれば戸籍も変動するということです。ここでいう氏とは,民法上の氏をいいます。民法上の氏は,夫婦の氏と親子(実親子と養親子)の氏に分けることができます。 氏は,日本国民であれば出生と同時に取得することになります。民法790条は,子の氏を規定したものです。その1項本文は,「嫡出である子は,父母の氏を称する。」とし,2項は,「嫡出でない子は,母の氏を称する。」としています。このように,民法上親子という身分関係に基づく出生の事実によって当然に定まるものとされており,これを氏の原始的取得といいます。また,民法の規定によって氏を決定できない帰化者の場合は,新たに氏を創設しなければなりませんが,その選択は自由です。これを氏の選択的取得といいます。 このように各自が取得した氏も,その後の身分行為によって変動することがあります。民法750条は,「夫婦は,婚姻の際に定めるところに従い,夫又は妻の氏を称する。」と規定しています。したがって,山田さんと鈴木さんが婚姻するときは,どちらかの氏を選択することになります。また,鈴木さん同士が婚姻するときも,一方の「鈴木」の氏を選択することになります。例えば,二人で,「鈴木」という氏を選択すると,山田さんについては,「山田」から「鈴木」に氏が変動することになりますし,鈴木さん同士の婚姻の際にも,一方の「鈴木」の氏を選択しますから,他方は「鈴木」から「鈴木」と呼称は同一ですが,民法上の氏の変動が生ずることになります。また,民法810条本文は,「養子は,養親の氏を称する。」と規定しています。したがって,田中さんが佐藤さんの養子となる縁組をすると,田中さんは「佐藤」という養親の氏を称することになります。このように,婚姻又は養子縁組という身分行為により氏が変わることを,氏の変動といいます。 また,戸籍の変動は,婚姻,離婚,養子縁組,養子離縁等の身分行為の結果として,当然に生ずる場合があります。さらに,生存配偶者の復氏,父又は母の氏を称する入籍等一定の要件の下に,直接氏の変更を目的とする個人の身分行為の結果,戸籍の変動を生ずる場合があります。例えば,親と同籍している者同士が婚姻するときは,夫婦について新戸籍を編製し,夫及び妻は,従前戸籍(実方戸籍)から除かれて新戸籍に入籍します。また,戸籍の筆頭者である配偶者の死亡後,婚姻の際に氏を改めた一方の配偶者は,生存配偶者の復氏の届出(民法751条1項,戸籍法95条)をすることにより,婚姻前の氏に復し婚姻前の戸籍(実方戸籍)に復するか,又は新戸籍を編製することになり氏の変動と戸籍の変動

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