改訂版境界の理論と実務
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8第1編 境界の基礎知識〈10〉  大阪高判平成10年1月30日判時1651号89頁。382頁注〈2〉参照。〈11〉  地上権界者に準用されている(民法267条)。〈12〉  この境界標は,当然には所有権界・地上権界を示す。境界標の多様性につき,69~73頁参照。〈13〉  岡山地判昭和35年8月23日下民11巻8号1761頁。トシテ隣地ノ所有者ニ対シ適当ナル共助ヲ請求スルコトヲ得ルヲ当然ノ法則ナリトス」としている。 オ 境界に関する交渉応諾義務 前記エの境界確認請求の前提として,円満な相隣関係を保持するために必要がある場合には,相隣地所有者間において信義則上,真摯に交渉する義務を生じると解される〈10〉。 ⑵ 境界標の設置権 ア 境界標の設置権・設置費用 土地所有者は,隣地所有者〈11〉と共同の費用で境界標を設置することができる(民法223条)〈12〉。設置・保存の費用は両者が折半し,測量の費用は相隣地の広さに応じて分担する(民法224条)。そのため,境界線上に設けた境界標,囲障,障壁,溝及び堀は,相隣者の共有に属するものと推定される(民法229条。一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁は,民法230条により除外)。 ただ,これらは強行規定ではないので,実際には,境界標を必要とする一方当事者が隣地所有者の了解を得て単独で設置する例が多い。 相隣地所有者が他方の承諾を経ずに境界石その他の境界標を設置した場合には,その境界標の設置はそのこと自体が相隣地所有者の所有権を妨害しているものと認められ,土地所有権に基づく妨害排除請求の対象となる〈13〉。それを避けるために,一方の土地所有者が単独で境界標を設置する場合,設置者の所有地内にいわゆる逃げ杭ないし方向杭を設置していることも少なくないようである。 イ 境界標の設置請求権 隣地所有者に対し,境界線上に杭や鋲などの境界標を設置せよとの請求権があるのか。この点につき,東京地判平成23年7月15日判時2131号72頁は,民法223条(及び225条1項)それ自体を直接の根拠として,主文において要旨

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