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4実に危険を避け,しかも個人の負担を軽くする合理的な仕組みということができます。 社会保障はどのような方法で危機を回避するのでしょうか。 もし,100人に1人の確率で大きな病気になるとしますと,たくさんの人が集まってそれに備えれば,一人ひとりは,100分の1の負担ですみます。こういうふうに,たくさんの人で危険を分散する仕組みを「保険」といいます。わが国でも,他の国々でも,社会保障の多くの部分は,このような「保険」の仕組みを利用して行われています。社会保障は,いざというときの備えで,生活全般の「保険」といってもよいかもしれません。 ただ,保険といっても民間の保険会社の保険とは少し違っています。それは,一定の要件に該当した人はすべて加入しなくてはならないことになっているところです。これを「強制加入」といいます。また,民間の保険では,危険=リスクの発生確率に応じて負担が違います。例えば,民間の自動車保険では,事故をおこしそうな人やおこしたことのある人は保険料が高くなっています。しかし,社会保障の保険では,例えば,病気がちの人も,元気な人も,そのことで医療保険の保険料には差がありません。これは,病気というのは個人の責任によっておこるものではないことから,みんなで平等に危険の負担をしようという考え方に立っているからです。強制的に加入するというのも同じ理由です。そうでないと,病気にならないと考える元気な人は保険に入らず,保険に入るのは病気がちな人ばかりになって,保険が成り立たないのです。こういう保険=社会保障としての保険を,民間保険と区別して,「社会保険」と呼んでいます。 しかし,生活上の危機を避けるといっても,保険の方法によることがむずかしい場合もあります。保険というのは,危機の発生を予測して事前に備えるものですが,危機の発生の可能性が低くて,事前に備えようというふうには思わない場合や,先天的な障害のように,事前に備えるということがそもそもむずかしい場合もあります。また,危険の種類が多かったり,その対応2.社会保障の方法─社会保険と社会扶助

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