17_社障
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第1 社会保障とは何か5がさまざまで,事前に画一的に決めておくということがむずかしい場合も保険には不向きです。そういう場合は,事前に備えておくよりも,危機が発生したあとで対応し,生活の援助をする仕組みを公的な制度としてつくっておくほうが安心です。生活保護や社会福祉は,そういう事後的な援助の仕組みです。こういう仕組みを「社会扶助」と呼んでいます。 社会保障は,このように,大きくは,「社会保険」と「社会扶助」の2つの仕組みから成り立っています。 「社会扶助」は,さらに「公的扶助」と「社会福祉」に分けられます。「公的扶助」は,わが国では,「生活保護」と呼ばれています。 「公的扶助」は,もともと,「救貧法」に起源をもつといわれます。最初の体系だった救貧法は1601(慶長6)年にイギリスでつくられた「エリザベス救貧法」で,これを社会保障の起源とする人もいます。「救貧法」というのは,住むところもなく,食べ物も買えず,道ばたで飢え死にするような人たちを救おうというものでした。そういう生活困窮者は,放置しておくと治安上も問題でした。だから,施策としては,施設に収容して,最低限必要な食事などを提供するということが中心になりました。 しかし,そういう人たちに,住むところを与え,食べ物を与えているだけでは,なにも解決されません。なぜこの人たちは生活に困窮しているのかを探り,その原因をなくしていかないと,永遠に国に扶養される惰民をつくるだけになってしまいます。そこで,生活困窮者に,生業を与える方策がとられました。働けないのは,知識がなく,手に職がないためだとすれば,教育や職業訓練が行われ,ときには,公共事業のようなものに従事させて,職を与えるということも行われました。しかし,そうやって教育訓練をするとなると,人によって必要となるものが違います。子どもには教育を施して一人前になって働けるようにすることが必要ですし,病人には医療が必要です。若くて元気な人には働く場を与え,女性には着物を縫うというような軽い仕事ができるようにする必要があります。そういうふうに,生活困窮者が正業3.公的扶助と社会福祉

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