(試し読み)家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第4版)
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3 家庭裁判所における遺産分割事件の特徴4 第1章 遺産分割総論⑴ 合意を基礎とする調停・審判の運用 遺産の分割について共同相続人との間に協議が調わないときや,協議をすることができないときは,各共同相続人は家庭裁判所に遺産の分割を請求することができる(民907条2項)。 遺産分割事件※は,基本的には相続人が本来任意に処分することを許された遺産に対する相続分を具体化するための手続であり,私的な財産紛争であるから,当事者の合意を可能な限り尊重する当事者主義的運用が望ましい。したがって,遺産の範囲,特別受益,寄与分,遺言の効力,遺産の評価,具体的相続分及び分割の方法については,合意を基礎として調停・審判を進めている。という場合などがあげられる。これらは遺産の代償財産であるが,相続財産ではないから,原則として,遺産分割の対象とならない。このように,「分割時に存在」する遺産を分割することになる。このことに関連して,遺産の範囲を定める基準時をいつにするべきかについて見解が分かれているが,実務においては,遺産分割時説を採用している。すなわち,遺産分割は共同相続人の共有財産をその相続分に従って公平かつ合理的に分配する制度であり,新たな権利又は法律関係を形成することを本質的な目的とするからである。この立場に立つと,遺産分割時に存在しない遺産は,遺産分割の対象とならないことになる。 もっとも,一定の要件のもと,現存しない遺産についても,遺産分割の対象とすることは可能である(民906条の2)。 第3に,相続人間で遺産分割協議が有効に成立している場合には,その遺産については分割が終了していることになるから,遺産分割の対象となる遺産が存在しないことになる。したがって,遺産分割の対象となる遺産は,「未分割」の遺産ということになる。※ 遺産分割前に処分された財産(遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲)については,165頁を参照されたい。

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