(試し読み)家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第4版)
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名古屋高決平成12年4月19日(家月52巻10号90頁) 東京高決昭和63年5月11日(家月41巻4号51頁)3 家庭裁判所における遺産分割事件の特徴 5⑵ 中間合意調書の意義 調停運営の実務においては,遺産の範囲と評価等につき,調停期日で一定の合意がなされたときは,その期日調書に合意内容を記録している(中間合意調書)。当事者との間において合意した問題が遺産分割という最終目標との関係でどのような位置づけにあるのか共通認識を持つことが有益であるからである。そして,当事者の合意を積み重ね,その合意を前提として手続を進めることになる(段階的進行モデルに基づく中間合意調書の意義については『実践調停』参照。)。審判手続に移行した場合でも中間合意の内容を維持する旨合意をしていたり,審判期日において再度中間合意をなしたときは,中間合意調書として記録化されている限り,審判の資料とすることができる。⑶ 中間合意の内容についての翻意 中間合意についての当事者に対する拘束力は信義則に基づくものであり,いったん合意をしておきながら翻意することが手続上信義に反する場合には,翻意は許されず,中間合意の内容が判断の資料となると解される。※ 裁判所で申立てを受け付けた後の手続は,すべて「〜事件」と呼称する。裁判例1 「遺産分割手続において,当事者が任意に処分できる事項について,当事者全員の合意がある場合には,これを前提として審判をすることも相当と解される。」裁判例2 「〔抗告人の追加主張は〕手続上信義に反する行為であるともいえるから,当裁判所がこの点に関する立証を許さないで,抗告審としての判断をしても,抗告人の財産権を不当に侵害し,かつ著しく正義に反する違法不当な裁判をしたということはできない。」※ 土地建物の評価について,原審においていったん合意をしておきながら,自己の意に副わない審判がなされるや,これに抗告を申し立てたうえ,土地建物の評価についての不服の主張を追加した事案において中間合意につき当事者に対する拘束力を認めている。

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