(試し読み)家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第4版)
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章12配偶者居住権1 意 義376 第12章 配偶者居住権⑴ 制度趣旨 配偶者居住権の制度は,相続開始の時に被相続人の財産に属した建物に居住していた配偶者に住み慣れた居住建物の「全部」について無償で「使用及び収益」をする権限を認めることによって,遺産分割の際に,居住建物の所有権を取得する場合よりも低廉な価額で配偶者が居住権を長期的に確保することができるようにする制度である(民1028条1項)。そして,低廉な価額で居住権を確保することで,被相続人の配偶者は,その後の生活資金として預貯金等の財産を一定程度確保することができることになる。⑵ 制度の活用場面 配偶者居住権は,配偶者の居住権を保護するために特に認められた権利であるが,この配偶者居住権が活用される場面は,遺産分割の場合に限られるものではなく,被相続人が遺言によって配偶者に配偶者居住権を取得させることもある。遺言作成の現場において,配偶者居住権を遺贈する旨の意思が表示されることも少なくないが,配偶者の居住権を確保できるものの他の財産は相続人以外の受遺者に遺贈させる例もある。⑶ 構 造 配偶者居住権を設定する場合においては,配偶者のための居住建物の使用収益権限と,他の共同相続人の配偶者居住権の負担付きの所有権に分かれることになる。そこで具体的な分割方法と関連しての評価(配偶者居住権の価額の算定方法)の問題が顕在化する。⑷ 調停運営の視点 配偶者居住権は,段階的進行モデルに基づく調停運営において,どの段階で調整すべきかが問題となる。すなわち遺産の評価において,配偶第第章

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