(試し読み)家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第4版)
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章13具体的な分割方法 最三小決昭和30年5月31日(民集9巻6号793頁)1 遺産分割の方法1 遺産分割の方法 403裁判例73 「相続財産の共有(民法898条)は,民法改正の前後を通じ,民法249条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではないと解すべきである。……遺産の共有及び分割に関しては,共有に関する民法256条以下の規定が第一次的に適用せられ,遺産の分割は現物分割を原則とし,分割によって著しくその価格を損する虞があるときは,その競売を命じて価格分割を行うことになるのであって,民法906条は,その場合にとるべき方針を明らかにしたものに外ならない。」⑴ 選択の視点 具体的な分割方法には,現物分割,代償分割,換価分割,共有分割(物権上の共有)の4種類がある。これらの分割方法のうちいずれを選択するかは,家庭裁判所の広い裁量に委ねられている。すなわち,家庭裁判所が,民法906条に則り,遺産に属する物又は権利の種類及び性質,各共同相続人の職業その他一切の事情を考慮して,当事者の意思に拘束されることなく,後見的立場から合目的的に裁量権を行使して具体的に形成決定することになる。 実務においては,分割方法につき,いずれを選択するかを決める際には,各当事者の意向を聴取し,可能な限りこれを尊重する運用をしている。⑵ 分割方法の順位 まず,現物分割を検討し,それが相当でない場合には代償分割を検討し,代償分割もできない場合には換価分割を検討し,共有のままにする分割は最後の手段となる。第第章

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