(試し読み)家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第4版)
59/66

員」の債務者に対する通知,②債務者の承諾により,対抗要件を具備することができる。⑵ 問題点 被相続人は既に死亡しており,相続人もどのような状況の下で遺言がされたかを認識していない場合が多いので,受益相続人以外の相続人に債務者に対する通知を期待することは困難である。また,受益相続人以外の相続人は対抗要件の具備に協力すべき義務を負わないから,対抗要件の具備について受益相続人以外の相続人の協力が得られない場合に備えて,別の手段を設けておく必要があると考えられる。⑶ 受益相続人の債務者に対する通知(民899条の2第2項) 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)により法定相続分を超える債権の承継がされた場合には,民法467条に規定する方法(前記⑴①②参照)のほか,「当該債権を承継する相続人(受益相続人)」の債務者に対する通知により対抗要件を具備する方法を認めた(民899条の2第2項)。 なお,受益相続人が債務者以外の第三者に対し対抗するためには,債権譲渡の場合と同様,確定日付のある証書によって通知することが必要である。 受益相続人の債務者に対する通知としては,通知の際,遺言の内容又は遺産分割の内容を明らかにすることを要求した(民899条の2第2項)。7 特定財産承継遺言による債権承継と対抗要件 543① 内 容② 受益相続人の債務者に対する通知の要件【参 考】 受益相続人が遺言の内容を明らかにしたと認められる場合 債務者の遺言書の原本を提示するか,遺言書の写しを提出する場合においては同一内容の原本が存在することについて疑義を生じさせない客観性のある書面であることが必要であり,公証人によって作成された遺言書の正本又は謄本,自筆証書遺言書の原本,検認調書の謄本に添付された遺言書の写し等がこれに当たると解される。

元のページ  ../index.html#59

このブックを見る