(試し読み)家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第4版)
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3 遺留分侵害額請求の相手方 遺留分侵害額を負担する受遺者,受贈者及びその包括承継人である。 特定財産承継遺言により財産を承継した相続人又は相続分の指定を受けた相続人も,遺留分侵害額の請求の相手方となる(民1046条)。4 請求方法570 第24章 遺留分侵害額請求権③ 反対説⑴ 意思表示 遺留分侵害額請求権は,形成権であり,意思表示の方法によって行使される。遺留分権利者が受遺者・受贈者に対して遺留分に関する権利を行使する意思表示をしないと,遺留分権利者と受遺者等との間に,遺留分侵害額に相当する金銭債権は発生しない。 遺留分権利者の権利行使は,あくまでも形成権の行使であるから,遺留分侵害額(金額)を具体的に示して意思表示をする必要はない(『一問一答』124頁)。を尊重して,遺留分を侵害する遺言について,いったんその意思どおりの効果を生じさせるものとした上,これを覆して侵害された遺留分を回復するかどうかを,専ら遺留分権利者の自律的決定にゆだねたものということができる(1031条,1043条参照)。そうすると,遺留分減殺請求権は,前記特段の事情がある場合を除き,行使上の一身専属性を有すると解するのが相当であり,民法423条1項ただし書にいう「債務者ノ一身ニ専属スル権利」に当たるというべきであって,遺留分権利者以外の者が,遺留分権利者の減殺請求権行使の意思決定に介入することは許されないと解するのが相当である。」 代位債権者には責任財産の充実への期待(債務者の財産が相続により拡大することに対しての期待)があるとして,無資力状態にある債務者(遺留分権利者)の意思を尊重する判例に疑問を提起する見解(潮見・546頁,二宮・486頁参照)が参考になる。

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