新成年後見における死後の事務
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5② 民法873条の2第1号③ 民法873条の2第2号④ 民法873条の2第3号 これらの要件は,死後事務が例外的なものであることを前提としており,相続人の権利義務とも関係するのであり,このように規定されたと思われます。これらは,死後事務の基本をなす重要な要件であると言えます。 また加えて,この死後事務は,後見類型に関してのみの規定とされています。後見類型に限って認めた理由としては以下のことが述べられています。保佐人や補助人は包括的な管理権を有しておらず,もしも認めると,生前よりも死後に強い権限を持つことになりかねず,必ずしも相当ではないと説明されています7)。 死後事務として何をなし得るかに関して,民法873条の2第1号で,「相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為」と規定しています。特定財産の保存行為として,相続財産に属する債権について時効の完成が間近に迫っている場合に行う時効の中断や,相続財産に雨漏りがある場合の修繕行為が示されています8)。 2号では,「相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済」が規定されています。「弁済が遅れると遅延損害金を課される等,相続財産を侵害するおそれがあることから,とくに家庭裁判所の許可を必要とすることなく債務を弁済することができるとして定めた」と理由が記されています9)。そしてその例として,入院していた際の医療費,成年被後見人が住んでいた居室の賃貸料の支払が挙げられています10)。 3号では,「その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前二号に掲げる行為を除く。)」を規定しています。そしてその行為をするには,家庭裁判所の許可を得ることが必要となっています。 その例として,遺体の引取りや火葬等のための契約の締結が示されています11)。火葬・埋葬に家庭裁判所の許可が必要とされていますが,その理由は,「相続人が遺体の引取りを拒んでいるような場合等において,成年後見人が火葬等の契約を締結する必要に迫られることがあるが,火葬はいったん行う第 1 章 死後事務に関する改正法(民法873条の2)について

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