新成年後見における死後の事務
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5 保佐・補助について54第 2 編 円滑化法と実務の対応どのように考えるべきなのでしょうか。実務上,このあたりの境界的な費用も病院費用に含むという見解を出している家庭裁判所もあるようですが,法律上明確にされていません。また,病院費用の中に入院中の寝具等のレンタル費用やおむつ代等,専門業者に支払う費用は含まれるのでしょうか。 エンゼルケアは成年被後見人の生前に必要であった医的侵襲により傷ついた体を修復し,亡くなられた方の尊厳を回復する行為や,感染症を予防する行為でもあることから,生前の医療行為とは切っても切れない関係にあり,民法873条の2第2号の病院費用に含まれる費用であると考えるべきでしょうし,死亡診断書については,「死亡診断書(死体検案書)は,人の死亡に関する厳粛な医学的・法律的証明であり,死亡者本人の死亡に至るまでの過程を可能な限り詳細に論理的に表すもの」13)であり,一連の医療行為の最終的なものと考えられることから病院費用に含まれるものと筆者は考えます。同様に入院中の寝具等のレンタル費用やおむつ代等,専門業者に支払う費用も病院入院中は必要不可欠な費用であることから病院費用に含まれると考えるべきでしょう。 円滑化法における死後事務の規定は,後見のみの規定とされていますので,預貯金管理の代理権と,病院費用の支払の代理権が付与されていても保佐・補助においてはこれまでの状況と変わりはありません。 保佐・補助は被保佐人・被補助人の死亡により終了し,原則,保佐人・補助人が行うべきことは管理の計算(民876条の5第3項,876条の10第2項がそれぞれ民870条を準用しています。)と債務を含めた財産の引継ぎの事務を行うのみとなり,それまで有していた代理権もなくなります。保佐人・補助人は,被保佐人・被補助人の生前に代理して病院費用を支払っていたとしても,その死亡後は病院費用を支払う明確な根拠がなくなります。それまで保佐人・補助人が管理していた財産は相続人のものになっており,勝手にその財産から病院費用を支払うことは問題があるでしょう14)。保佐人・補助人の対応としては,病院費用の債務者は相続人となるので,病院にはそのことを伝え,

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