新成年後見における死後の事務
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iii推薦のことば 本書の前身である「成年後見における死後の事務」の初版が刊行された平成23年には,第三者後見人の選任率は約44.4%(親族後見人の選任率は約55.6%)でした。しかし平成24年に親族後見人と逆転して平成29年には約73.8%を占める割合まで拡大しています。 このような状況は,「成年後見人の選任率として本来あるべき姿か」「後見人としての支援から親族が排除されるのではないか」という議論がある一方,第三者後見人が行う事務の「三大課題」といわれる「死後の事務」「医療行為に関する同意」「責任無能力者の後見人の責任」の問題を改めて浮き彫りにしています。 そのうち「医療行為の同意」については,平成26年5月15日に当法人の意見書である「医療行為における本人の意思決定支援と代行決定のプロセスの透明化について」を公表いたしました。他の専門職団体も同様の提言を行うなどして各界から国に対し立法による改善を求めていますが,いまだその実現には至っていません。 また,「責任無能力者の後見人の責任」については,認知症高齢者に関するJR東海列車事故に関する最高裁判決(最三小判平成28年3月1日民集70巻3号681頁)により介護家族のみならず成年後見人の責任の範囲にも言及した判断がされましたが,更なる研究と議論が必要です。 そのなかで,「死後の事務」は,制度施行当初より,多くの理論と後見実務の観点からの議論が積み上げられてきました。 これらの議論は,単に実務に理論としての道筋を示したのみならず,家庭裁判所の運用にも大きな影響を与え,「死後の事務」という課題の存在とその解決の必要性を強く訴えるものとなりました。 その結果,議員立法により,平成28年4月に「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成28年法律第27号)が成立し,同年10月13日から施行されました。 これは,制度施行以来の各方面の努力が結実したものとして後見類型にお推薦のことば

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