新成年後見における死後の事務
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vはしがき 成年後見制度が民法典に設けられて20年近い年月が経過しようとしている。2006年に成年後見分野研究会が発足し,実務に携わっている司法書士の現場の問題として,当時,問題意識も薄かった死後事務をテーマにして,議論をし研究を深めた。そして,2011年に研究会の成果として「成年後見における死後の事務」を公刊した。同書では,現に生じている,また生じうる問題の姿を示し,それらの解決方法を探った。幸いにして,この書物に対して興味が持たれた。問題の姿を示すことによって法理論が欠缺しているとの意識が実務家に広がった。実務的にも社会的にも問題意識を共有する契機を,「成年後見における死後の事務」の書物は与え得たと思う。 その後,この書物で試みた問題提起に関して,解釈法上の解決編を作成しようとして,研究会を重ねていたところ,2016年に,「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」によって,民法873条の2が新設され,死後事務に関する規定が設けられるに至った。 そこで,これまでの研究会の成果をもとにして,新設の民法873条の2を分析,検討し,その意義を位置付け,また同時にこの条文の理論上そして実務上の問題点を明確にする作業を同時に行った。これは研究会の解決編に相当する作業でもあり,「新・成年後見における死後の事務」として,その成果を公にすることにした。改正に直接関係しないと思われるテーマの論考の中には以前のままのものもあるが,新たに設けられた民法873条の2に関連するテーマは新たに書き改められている。またコラムの多くも新法に対応してテーマが選ばれている。 民法873条の2によって死後事務の問題はすべて解決されたわけではなく,相続法との関連性において,問題点が山積されたままであることは否定できない。そのほとんどが相続法に内在する問題ではあるが,後見の観点からもさらなる理論上の整備が必要であろう。本書では,さらに,信託との観点からの論考も新たに加えている。死後事務の問題を信託の観点からも光をあてることができるのであろうか。異なった視点からの分析方法で,将来への解はしがき

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