第3版 Q&A DV事件の実務
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⑵ 犯罪統計7第1 ドメスティック・バイオレンス及び DV防止法5 戒能民江『ドメスティック・バイオレンス』(不磨書房,2002年)115頁以下7.8%である(男性1.5%)。そのうち8割近くが加害者と面識がある。そして,加害者と面識があったと回答した女性のうちの26.2%,もっとも多い割合が,「配偶者(事実婚や別居中を含む)・元配偶者(事実婚を解消した者を含む)」と回答した。性的被害については,民間団体の調査が実態をより詳細に明らかにしてきた。例えば,古い調査であるが「夫(恋人)からの暴力」調査研究会『ドメスティック・バイオレンス新版』(有斐閣,2002年)の中の1992年7月から12月にかけて実施したアンケート調査(回答数807名)によると,回答者のうち半数を超える473人が性的暴力を受けていた。その8割以上が「気がすすまないのにセックスをさせられた」ことがあり,「他の家族が気になるのにセックスを強要された」,「セックスや性器について非難された」,「暴力的に(殴る,ねじ伏せる,縛るなど)セックスを強要された」,「不快な,屈辱的なポーズや方法でセックスをさせられた」との回答も相当数あった。DVに関するこれらの調査から,被害者の多くが女性であること,しかし,相談を躊躇し被害が潜在化・深刻化しやすいこと,被害者がDVから逃れることを躊躇している背景には,賃金格差など社会的な男女格差の問題もあることなどが明らかとなった。調査の実施自体が,潜在化していた女性の被害を顕在化させ,被害者の救済とDVの防止に関する施策の必要性を明らかにし,DV防止法の制定・改正を促してきたといえよう。2017年の犯罪統計によれば,配偶者が被害者となった犯罪の検挙件数は,殺人罪157件,傷害罪2,682件,暴行罪4,225件である(図3)。なお,保護命令違反の検挙数は,80件(2017年)であった。傷害罪(7.5%),暴行罪(8.7%)に比し,殺人罪のみ,加害者の44.6%という比較的高い割合で妻が加害者であることが注目される。DVがある配偶者間にはそもそも力の不均衡があり,DV被害者が反撃できるのは,DV加害者が熟睡中や泥酔中など無力になったときであり5,反撃の際は後の再攻撃

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