第3版 Q&A DV事件の実務
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95 ① 調停申立書等第4  DVを原因とする離婚手続等2 例えば,以下のような報道がある。宮崎家裁の裁判官が,DV被害女性の住所を誤って婚姻費用分担の決定書に記載して,夫に知らせてしまった。夫は,女性に対する暴行容疑で書類送検されていた(日経新聞2012年6月15日夕刊,共同通信2012年6月15日)。  また,善通寺簡裁の事務官が2013年7月5日,保護命令を受けていた男性に,被害者の女性が住む自治体名やマンション名などを伝えてしまい,簡裁が同月8日,女性に謝罪した(毎日新聞大阪版2013年7月10日)。家事調停の申立書の写しは原則として相手方に送付される(家事256条1項)。「家事調停の手続の円滑な進行を妨げるおそれがあると認められるときは」,調停の申立てがあったことを通知することをもって,申立書の写しに代えることができるとの例外規定があるが(同項ただし書),膨大な事件の記録を扱う家庭裁判所では,代理人作成の書面を例外に当たるかどうか精査することはないと心得て,相手方に送付されることを念頭に申立書を作成する。各家庭裁判所のウェブサイトに申立書の定型書式が用意されており,ダウンロードして作成できる。定型書式を用いず,詳細な申立書を作成する弁護士もいるようだが,特に避難しているDV被害者の場合,あまり詳細な事情を書くと追跡の手がかりを与えることにもなりかねない。そこで,定型的な書式を用いるほうがよい。避難先を加害者に隠している場合,申立書の当事者欄の住所には,住民票を移動していなければ住民票上の住所,加害者と同居していた住所等,加害者に知らせてもよい住所を記載する。東京家庭裁判所は,その上で,連絡先等の届出書に書類の送付場所や平日昼間の連絡先を記載し,非開示の希望に関する申出書をステープラーで個別に綴じて提出するよう,求めている。連絡先等について非開示を希望する場合には,原則として,開示により当事者や第三者の私生活,業務の平穏を害するおそれがあるとして開示しない取扱いとなっている。もっとも,代理人がついている場合には,連絡先等の届出書に代理人の事務所住所等を記載して提出すればよい。稀ではあるが裁判所が被害者の住所を知らせてしまうこともあり2,注意が必要である。被害者が避難先を秘匿したい場合,手続代理委任状には,申立書に記載した住所(加害者に開示できる住所)を記載してもらう。各家庭裁判所は,申立書以外の定型書式も準備している。例えば,東京家庭裁判所のウェブサイトでは,夫婦関係調整調停申立事件などについて,

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