第3版 Q&A DV事件の実務
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第Ⅰ部 DV事件実務の基礎3 事情説明書,子に関する事情説明書にも,非開示の希望に関する申出書を添付して提出することができるが,連絡先等の届出書と異なり,裁判官の判断により閲覧謄写の申請が許可されることもある(→98頁)。「事情説明書」と「子に関する事情説明書」を用意しており,ダウンロードして記入し利用できる。こちらの書面も,相手方からの閲覧謄写申請があれば,許可されうるので,その点を念頭に置く3。未成年の子がいる場合に提出を求められる子に関する事情説明書には,「お子さんについて,何か心配していることはありますか」という質問事項があり,はい・いいえの回答と自由記載欄がある。ここにDVの目撃や虐待の事実を書くと,相手方が閲覧謄写した場合に,紛争が激越になりかねない。しかし,調停委員会には情報として提供したい事実でもある。事案によるだろうが,一般的には,調停の趣旨が損なわれないように,相手方に対する人格攻撃などに陥らず,あまり詳細を書かずに簡潔に記載する程度がよいだろう。さらに,東京家庭裁判所などでは,進行に関する照会回答書の定型書式もホームページからダウンロードできるように準備し,申立書(相手方であれば答弁書)とともに提出するよう求めている。裁判所が進行に関する情報や意向を聴取するための書面であり,当事者の期日出席の見通しのほか,暴力の有無等の警備の要否判断に必要な情報,当事者から裁判所に配慮を求めること等を記載する。DV事案というだけでは,後述(→100頁)のとおり,調停前置主義の例外(家事257条2項ただし書)の扱いはされないのが通常なので,照会回答書に暴力についての情報を記載し,被害者の安全確保の徹底を裁判所に要請するべきである。具体的には,照会回答書に(東京家庭裁判所の書式であれば「7 裁判所に配慮を求めることがあれば,その内容をお書きください。」の項目に),DV事案であり,相手方との遭遇を避ける必要があり,時差呼出し(呼出し時間をずらしてもらうこと),(東京家庭裁判所など待合室が複数の階に分かれている家庭裁判所であれば)別階待機等の配慮を徹底してほしいと記載する。なお,東京家庭裁判所などでは,調停の各期日の開始時及び終了時において双方当事者本人の立会いのもとで,裁判所から,手続説明を行っている(東京家庭裁判所では「双方当事者本人立会いによる手続説明」と呼ぶ)。家事事件手続法制定の趣旨の1つである,調停手続の透明性の確保の観点から,主体的な合意形成の前提となる,手続の進行状況や対立点,他の96

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