97 ② 訴 状 ③ 書証,添付書類第4 DVを原因とする離婚手続等4 秋武憲一著『第3版 離婚調停』(日本加除出版,2018年)44頁は,調停の担当書記官は,記録からDV等の注意を要する事件について,注意喚起のために事件記録の表紙や付せん等に,DV事案であることや保護命令の申立てがあった事案であることなどを記号や略字等で表示していることがあり,調停委員会はそれらを常に確認しておくべきであるとする。当事者が提出した資料の内容等について,両当事者と裁判所が共通の認識を持つための取組とのことであるが,DVがあり具体的な支障がある場合は実施されない。その具体的な事情も,照会回答書に(東京家庭裁判所の書式であれば「7 裁判所に配慮を求めることがあれば,その内容をお書きください。」の項目に),あらかじめ記載する4。家庭裁判所によって書式や運用が異なる面もあるが,いずれにせよ,不必要に被害者の避難先探索の手がかりを与えたり,紛争を激化させたりすることのないよう,簡潔にして必要な情報を網羅する書面を作成し,さらには進行についても被害者の安全が確保されるように十分な情報を事前に提供すべきである。なお,申立書等いわゆる主張書面については,非開示やマスキングをすることは想定されていないことにも,留意すべきである。訴状副本は被告に送付されることから,訴状の記載内容にも,秘匿した避難先の情報の手がかりがないよう,細心の注意を払う。例えば,当事者目録については,後記④(→99頁)を参照。被害者が避難場所を秘匿している場合には,資料(調停・審判時),書証(訴訟時)や添付書類にも注意する。審判では,当事者又は利害関係を疎明した第三者が記録の閲覧謄写を請求した場合,裁判所は原則として許可しなければならない(家事47条1項・3項)。調停での記録の閲覧謄写は家庭裁判所の許可による(家事254条)。このように,調停と審判とでは規律が異なるが,婚姻費用や面会交流等の調停の場合,審判に移行した場合には記録の閲覧謄写が原則許可されることを踏まえて,調停時でも書面の提出には細心の注意を払うべきである。
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