第3版 Q&A DV事件の実務
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第Ⅰ部 DV事件実務の基礎(家事規3条2項)。経済事件の資料といっても,給与明細,源泉徴収票,賃貸5 内閣府男女共同参画局推進課は,裁判所に提出した年金分割の情報通知書から秘匿していた被害者の住所が判明してしまったことから,都道府県男女共同参画担当部等に対し,秘密の保持への一層の周知を呼びかけている(平成22(2010)年11月15日「『年金分割のための情報通知書』に関する情報提供について(事務連絡)」)。婚姻費用,養育費,財産分与などの経済事件で,書面を裁判所に提出する際は,他方当事者に交付するための写しを裁判所に提出するよう求められる借契約書,生活保護受給証明書等に,住所や仮名など,秘匿したい情報が明記されているものが少なくない。さらに,被害者から,診断書(被害者の避難先である居所,病院名,医師名等),写真(その背景等),子の通知表(学校名,校長名,担任名,校章等),年金分割の情報通知書(住所,発行元の年金事務所)等を提出することも多い。これらの書類に,被害者の避難先の手がかりとなるような事項が記載されていることがある5。提出する資料,証拠中に,秘匿したい事項が記載されていて,その部分を隠せば,他方当事者分の写しを提出したり,証拠として副本を渡したりしてもよい場合には,その部分をマスキングして提出する(例えば,診断書中の居所,病院名,医師名等)。なお,年金分割情報通知書の申請にあたり,住所を秘匿していることを伝えれば,年金事務所は,住所や発行元の年金事務所を記載しないで発行してくれる。あるいは,住所や発行元の年金事務所の部分をマスキングした原本を提出することも認められている。診断書については,保護命令の申立ての際の注意点(→65頁,第Ⅱ部Q28)に留意する。調停,審判について,マスキングでは対処できないが相手方に開示しないことを希望する資料には,非開示希望に関する申出書を添付する。申出書と当該書面をステープラーで留めて一体として提出する。これを添付しないで提出した資料は,非開示希望がないものとして取り扱われてしまうので,注意する。しかし,申立書を添付しても,他方当事者から閲覧謄写が申請された場合,裁判所が許否を判断し,許可する場合もある。その場合非開示の申出書を添付して提出した当事者に連絡されるが,提出を撤回する扱いは認められない。また,資料説明書を作成するよう求められるが,非開示希望申出書を添付し98

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