第3版 Q&A DV事件の実務
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vは し が きはしがき弁護士として家事事件に関わっていますと,保護命令を申し立てたいという相談に留まらず,離婚したいという相談の中で,実はDVを受けてきたと打ち明けられたり,離婚等の手続をとると逆上されるのではないかとの懸念を伝えられたりすることが,珍しくありません。ところが,被害者が勇気を出して何とか法律相談に行ったのに,相談担当者から心ない対応を受け,臆してしまったと伺うことがあります。弁護士は助言をする立場にありますが,だからこそ,ともすれば,相談者・依頼者の話に耳を傾けるよりも,上から圧倒するような言動をしてしまう危険があります。また,DV事案では,被害者の置かれた危険な状況を把握した上で十分な対処をしなければ,被害者さらには代理人自身をも危険にさらしてしまう可能性があります。本書は,DV事案について,私自身が日常的に注意し心がけたいと思っていることや押さえておきたい知識を網羅する実務解説書を目指しました。弁護士のみならず,支援者,そして被害者自身にも,手続や実務が理解できるよう,なるべく具体的な説明を心がけました。本書が,被害者の方が,救済される手段があることを知り,行動を起こす一助となれば,大変嬉しく思います。加えて,実務家たちがDVを軽視せず丁寧な対応を心がけ,解決へ導くきっかけになることを願っています。2011年3月の東日本大震災に被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。震災後,「絆」という言葉が盛んに聞かれるようになりました。しかし,他方,震災をきっかけに夫婦関係が悪化し,DVに悩む女性も少なくないことが報じられるようになりました(2012年3月1日毎日新聞朝刊,同月20日朝日新聞朝刊)。苛酷な状況が,物心両面の被害を深刻

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