実例 弁護士が悩む家族に関する法律相談
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2 受任に際しての注意点8本相談のポイント① 離婚自体については争いがなく,焦点は慰謝料の金額である。② 既に,複数の不倫の相手方から妻に対して相当額の慰謝料が支払われている。③ 妻に支払われた相当額の慰謝料が,今後,夫が支払うべき慰謝料額の算定に影響するか。④ 婚姻破綻後に妻が夫の過去の不倫の事実を知った場合の慰謝料額。 私がA男から本件を受任するに際して留意したのは,以下の諸点でした。⑴ 離婚意思の確認 B女はA男に対して離婚を求めてきました。本件ではA男は当初から離婚については全く争う意思がありませんでしたので,離婚の方向で裁判を進めることに問題はありませんでした。 しかし,一般的に,弁護士が離婚事件の相談を受けたときは,離婚意思の確認には慎重であるべきだと思います。離婚,離婚と簡単に言ってこられる依頼者であっても,離婚は一生の一大事ですから,離婚事件の行くつく先々を時間軸に沿って十分説明し,離婚の結末をご本人に具体的にイメージして貰って,場合によっては,直ちに事件に着手することはせず,1,2週間の間を置いて,ご本人の離婚の意思が変わらない場合に着手する慎重さが必要だと思います。あとから,「こんなはずではなかった。離婚しなければ良かった。」などと言われないように……。⑵ 不貞の事実関係の把握 B女は,A男に対し,離婚原因として不貞行為を挙げ,これを理由として1,000万円の慰謝料の請求をしてきました。 本件では,A男が不貞行為の相手とホテル内で撮ってパソコンに保存しておいた写真が,B女により複写され,持ち出されていたので,不貞行為の事実自体を争うことはできないとの結論になりました。第1章 離婚(婚姻)に関する法律相談

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