9事例1 婚姻外男女関係の法的解決 弁護士が不貞行為の絡む離婚事件の相談を受けたとき,不貞行為の存在自体を争っていくのか,反対の立場からは不貞行為をどのようにして立証していくかは難しい問題です。 弁護士が相談を受けたとき,依頼者が「不貞行為はない。」と話していても,何となく「疑わしい。」との心証を得ることがあります。離婚を拒否し,慰謝料も支払いたくない依頼者が「不貞行為はない。」と言うとき,弁護士から「本当は不貞行為をしているんでしょう。」などとは聞けません。 このようなときは,「不貞行為」が実際にはどのようにして立証されるかを十分説明しておくことが必要です。何回か相談を重ねる内に,依頼者が「実は……。」などと言ってくることもあり,その際には,これに対応した戦略の立て直しが必要です。 なお,不貞行為と離婚原因の関係は,後ほど述べます。 また,不貞行為の立証については,コラム①「離婚原因としての不貞行為」(10頁)を参照して下さい。⑶ 慰謝料の相場の説明 本件では,B女は不貞行為を理由として1,000万円の慰謝料の請求をしてきました。A男は,裁判所からの呼出し状と一緒に送られてきた弁護士の名前が入っている訴状に「1,000万円を支払え。」と書いてあったのに驚いて,弁護士に依頼する決断をしたそうです。 A男には,請求する慰謝料額を訴状にいくらと記載するかは原告の自由であること,実際に裁判所で認められる慰謝料額は裁判官によって多少のばらつきはあるがある程度の相場があることを説明して,落ち着いてもらいました。 慰謝料の相場については,後ほど述べます。 なお,本件でB女が請求してきた1,000万円の慰謝料は,A男の資力やB女が既に550万円の慰謝料をA男の相手の女性から支払わせていることから,金額的に明らかに相場から逸脱しています。したがって,1,000万円をそのまま経済的利益として着手金額を算定することは弁護士としては厳に慎むべきと考えます。本件では,紛争の実態に合わせた経済的利益を基準として着手金額を決めました。
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