12第1章 離婚(婚姻)に関する法律相談3・26民集50巻4号993頁等)。定したものとして,東京地判平4・12・10判タ870号232頁があります。)。京高判昭60・11・20判時1174号73頁)。号29頁以下の辻朗教授の記述は極めて示唆に富みます。教授は,「婚姻関係が維持されている場合の請求は,被侵害利益なしとの理由で正面から排斥する解釈がもっとも有効と思われる。」とされています。)。為をめぐる問題点は,後の⑶で説明します。)。 したがって,弁護士としても,依頼者が請求者,被請求者のいずれであっても,制限説ないし否定説に関する知識を持っていなくてはならないでしょう。 制限説ないし否定説の考え方は,以下のように判例上も様々な立場から主張されています。① 婚姻が事実上破綻した後の行為については責任を否定する(最判平8・ 被侵害利益との関係からは,不貞行為があっても,婚姻関係が維持され,破綻していない場合には,慰謝料請求は当然に否定ないし相当に制限されるものと考えられます(婚姻が破綻していない事例で,慰謝料額を50万円に限② 不貞についての主たる責任は不貞を働いた配偶者にあり,不貞の相手方の責任は副次的であるとして,不貞の相手方の責任を限定的に考える(東③ 被害者である妻が,夫とともに嫌がらせ目的で不貞の相手方に対し訴訟を提起する等の事情がある場合には,信義則や権利濫用の法理により請求を制限ないし否定する(最判平8・6・18家月48巻12号39頁)。 この判例は,配偶者に対しては不貞行為を宥恕しつつ,第三者に対してなした慰謝料請求に対抗する主張として,有効と考えられます(判タ1041④ 不貞行為は第三者と配偶者との共同不法行為を構成するもので,共同不法行為者間の損害賠償義務が不真正連帯債務の関係になることから請求に限定を加える(横浜地判平3・9・25判時1414号95頁。なお,この共同不法行⑶ 一方配偶者と相姦者との賠償義務の関係ア 不貞行為をした配偶者とその相手方は共同不法行為者である 不貞行為は,配偶者と相手方の共同不法行為を構成し,両者の賠償義務は,不真正連帯債務の関係になります(最判昭57・3・4判時1042号87
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