13事例1 婚姻外男女関係の法的解決頁。民法719条1項は「連帯して」と表現しています。)。 連帯責任の根拠は,被害者の救済を厚くすることにあり,被害者は,共同不法行為者の各人に対して,損害の全額を請求することができます。 しかし,ここで注意しなくてはならないのは,被害者である配偶者に発生した損害は一つで,その額は一定額,例えば,200万円であり,共同不法行為者各人から最終的に得る慰謝料額の合計は,これを超えることはできないということです。 一方から100万円の賠償を受け取れば,その限度で,他方に対する請求額は100万円に減少することになります。 このことは,理論的には明らかなのですが,実際には,配偶者と不貞の相手方を一つの手続で同時に相手方とする場合(例えば,共同被告として500万円を請求し,200万円が認容される場合)と,不貞の相手方に対してだけ,例えば,500万円を請求する訴訟を提起して,200万円の認容判決を得て,その後で配偶者に対し500万円を請求する訴訟を提起する場合とでは,被害者である配偶者が最終的に手にする総額に相違が出る可能性があります。すなわち,後者の場合にも,配偶者に対する500万円の請求に対して理論どおりに請求棄却の判決が出るか,というと極めて疑問があります。 これは,それぞれの裁判での原告,被告の主張の内容,立証資料の質や分量が異なり,また,裁判官の相場観の違いも影響するからです。 弁護士の事件に対する取り組み方にも影響を受けると考えられます。イ 共同不法行為であることを考慮した戦術の立て方 弁護士としては,不貞行為に基づく慰謝料請求事件を受任するに当たっては,依頼者がいずれの側かにより,共同不法行為である点を考慮した弁護の方針を考えていかなくてはなりません。 例えば,依頼者が請求する側の被害配偶者である場合には,まず不貞の相手方に対して請求し,その解決を待って,配偶者に対する請求,裁判をする方が最終的な慰謝料の額(合計額)が増える可能性があります。 他方,不貞の相手方が依頼者である場合には,不貞行為をした配偶者からも合わせて受任するなどして,両者の共同不法行為である実質を生
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