実例 弁護士が悩む家族に関する法律相談
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2■親族の関係を把握する3■遺産分割後の紛争の防止についての配慮271⑶ 相続分の確定 次に,それぞれの相続人の相続分を確定するためには,まずは遺言書が残されているかどうかを確認し,遺言がある場合にはその内容を検討します。特定の相続人に大部分を相続させたり遺贈したりする内容の遺言だった場合には,遺留分減殺請求についても説明する必要があるかもしれません。 遺言がなければ,法定相続分の割合で相続することを前提に相談を行うことになります。⑷ 生前贈与・寄与分の有無の確認 さらに相続分に影響を及ぼす要素として,一部の相続人に生前贈与があったか,あるいは寄与分が認められる可能性があるかといった事情についても留意すべきでしょう。 前記の資料の収集に関して事情を聞いている際に話に出ると思われますが,複数の相続人の間に心情的な対立があるのかどうかという点が遺産分割の処理に当たっては重要なファクターになりますので,その観点から親族の関係を理解・把握する必要があります。 こういった事情について,相談者から効率よく話を引き出すためのノウ・ハウは,弁護士としての経験を積むことによって養われるものですが,初心者の場合には,まずは相談者の立場に立って状況を理解するという姿勢で相談に応じていくのがよいと思います。話の内容が多少不合理だと思っても,他にも背景事情があってそのような発言をしているのか,それとも本当に不合理なのかといった判断は難しいことが多いので,相談者の言い分を肯定的に受け止めて聴き取りをした上で,さらに相手方の主張も聞き,妥当な解決方法を探ることになります。 遺産に,不動産,預貯金,有価証券といった種類がある場合,また,遺産である不動産に相続人の一部の方が居住している場合など,事案ごとに相続分・遺産分割に関する相談を受けるときのポイント

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