275事例21 親の世話をした人の相続分母さんには不動産の他に預貯金(約3,000万円)があったので,相続財産は,その預貯金とA子さんたちが住んでいた不動産(約7,000万円の価値)の合計約1億円相当の財産でした。弟や妹たちの主張は,①単純に兄弟姉妹で等分すると,一人当たり約2,500万円相当の相続権を有するから,預貯金を弟や妹たちに1,000万円ずつ分けるだけでは足りない,②不動産を売却して売買代金を均等に分けるか,A子さんが自分でお金を工面して弟や妹たちに2,500万円を分けてほしい,③A子さんが自分でお金を工面できないのであれば不動産を売るしかなくA子さんがその不動産に住み続けることは認められない,というものでした。⑶ A子さんの言い分(母と同居して世話をしたことを考慮してほしい) A子さんが法律相談に来たときに,A子さんが自分の言い分として話したのは,①お母さんは亡くなる前にA子さんに不動産をあげると言っていた。遺言書はないけれども不動産をA子さんがもらうのがお母さんの遺志に添う,②自分がずっとお母さんの世話をしてきたことが相続にあたっても評価されるべきであり,お母さんの世話を何もしてこなかった弟や妹たちと自分の相続分が同じになるのは納得できない,③弟や妹たちはそれぞれ家庭を持っていて住む場所があるが,不動産を売ったら自分は約30年間住み続けてきた家を追われることになる。本当に不動産を売却してまでして相続財産を分けなければならないのか,というものでした。本相談のポイント① 遺言書が作成されてないためA子さんが不動産を当然取得するわけではないこと。② A子さんが母を療養看護したことにつき寄与分が認められる可能性があること。③ A子さんの居住の利益が相続において考慮される可能性があること。
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