3 A子さんに寄与分は認められないのか2 受任に際しての注意点と相談者への説明第8章 相続分・遺産分割に関する法律相談(約7割)のでA子さんが不動産を取得するのは容易ではありません。こ276 生前にお母さんがA子さんに不動産をあげると言っていたとしても,お母さんが遺言書を書いていない以上はお母さんの遺志どおりにA子さんが不動産を取得できるわけではないこと,したがって,兄弟姉妹が均等に相続分を有することを前提としつつ,弟や妹たちにA子さんの要望を考慮してもらうよう話し合いをしていくことになります。A子さんの要望を考慮してもらうためには,A子さんがお母さんの療養看護にかなりの労力を費やしていたことを寄与分として主張したり,A子さんがお母さん名義の不動産に住み続けてきていることを居住の利益として考慮してもらうことを主張したりすることになります。相続財産中で不動産の占める割合が多いうした説明をA子さんにしました。そして,A子さんの弟や妹たちに連絡をして,できればA子さんが不動産を相続して家に住み続けられるように,そうでなくてもできるだけ多くの財産を相続できるように協議を進めてみることにしたのです。⑴ 寄与分とは A子さんが長年にわたってお母さんと同居をしてお母さんの世話をし続けてきたことは,相続にあたり考慮されないのでしょうか。 民法には寄与分を定めた条文が置かれています(民法904条の2)。相続人の中に,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付をした者や被相続人の療養看護などをした者がいた場合に,そうした寄与を相続にあたって考慮するというものです。相続人が寄与した分を相続財産から控除し,控除したのちの財産を基にしてそれぞれの相続人の相続分を算出するので,寄与をした人はその寄与分を他の相続人より多く受け取れることになります。A子さんが親の世話をし続けてきたことが寄与として考慮されるのであれば,A子さんは弟や妹たちよりも多くの財産を相続できることになり,仮に,A子さんの寄与分が2,000万円とされたときには,1億
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