実例 弁護士が悩む家族に関する法律相談
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277事例21 親の世話をした人の相続分円の相続財産から寄与分の2,000万円を控除した8,000万円を均等に分け,A子さんはそれに加えて寄与分の2,000万円(合計4,000万円)を受け取れることになります。A子さんがお母さんの世話をして大変な思いをしていたのに,弟や妹たちは全くお母さんの世話をしてこなかったことからすると,A子さんが弟や妹たちよりも多くの財産を取得するのは,一般人の感覚に照らしても妥当な結論のように考えられます。⑵ 寄与分が認められるための条件 しかし,寄与分が認められるためには,「被相続人の財産の維持又は増加に特別に寄与した」ことが必要なので,単に労務を提供したとか,親と同居をして世話していたというだけではなく,相続人が事業を手伝ったから相当の収益が上がって被相続人の財産が増えたとか,相続人が療養看護をしたおかげで被相続人が療養看護の費用を出さずに済んで財産が維持できたなどの事情があることが必要になります。直系の血族には扶養義務があることから,親と同居して世話をしてきたとしても,そのことだけで直ちに寄与が認められるわけではないということです。寄与の類型としては,事業に関して労務を提供する場合,事業に関する財産上の給付をする場合,被相続人の療養看護をする場合,被相続人を扶養する場合,被相続人の財産管理など事業に関しない労務を提供する場合などがありますので,寄与分を主張するにあたっては,これらのうちどのような類型の寄与をしたのか,その結果,被相続人の財産がどれだけ増加したのか,又は被相続人の財産が減少せずに維持されたかを具体的に主張していくことになります。⑶ 本事案における寄与分 A子さんの事案では,弟や妹たちも代理人を選任して,結果的には話し合いで解決をしました。このため,交渉にあたって口頭でA子さんの寄与分について主張をしたものの,具体的な資料に基づく寄与分の検討を経ることなく,結果的には寄与分をも考慮してA子さんが弟や妹たちよりも多めに相続をすることになりました。仮に,話し合いで解決しなかったとすると,親の世話をしてきたというA子さんの事案では,A子さんがお母さんの療養看護をしてきたことによってお母さんの相続財産から療養看護の費用を支出せずに済み財産が維持できた,支出を免れた費用相当分がA子

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