(2) 判断 以上で認定したとおり,被告Y1は,自転車通行可の指定のされた本件歩道上で普通自転車を運転していたものであるところ,普通自転車は,歩道を通行することができる場合であっても,徐行しなければならず,また,普通自転車の進行が歩行者の進行を妨げることとなるときは一時停止をしなければならないこととされている(道路交通法63条の4第2項)。 したがって,被告Y1としては,本件歩道を通行するに当たっては,進路前方の歩行者の有無を注視するとともに,歩行者の存在が予測されるときには,その通行を妨げることのないように,いつでも停止ないし減速するなどして衝突を回避することができるような速度と方法で通行すべき義務があったにもかかわらず,これを怠り,安易に歩行者が存在しないものと軽信し,進行した結果,本件事故が発生したものと認められる。したがって,被告Y1は,原告に対し,民法709条に基づき,本件事故により原告に発生した損害を賠償する義務を負う。 そして,歩行者は,歩道上で走行する自転車に対して注意する義務は,原則として負っていないというべきである上,原告が本件事故当時78歳と高齢であったこと,本件事故当時,原告以外にも本件トラックの荷台から商品を運ぶために本件歩道を横断していた者がおり,被告Y1にとって同トラックの陰から原告が出てくることも十分予測可能であったことなどからすると,本件について,過失相殺をしなければ損害の衡平な分担という観点から妥当性を欠くとまでは認められない。 よって,本件においては,過失相殺をすべきとはいえない。」98 第5 自転車 対 歩行者
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