全訂 新しい家族信託 (試し読み)
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はしがきix 信託は、信じてある人に財産を移転してこれを管理活用し、さらにはその財産を与えたい人にその仕組みの中で給付し承継させるという制度である。 この仕組みが、新しい信託法によって、一般の人、特に家族のための民事信託(家族信託)として幅広く活用できるようになったのである。ここでいう家族信託は、家族の生活を支援しさらには財産を承継するための信託である。 筆者は、公証人として多くの家族信託に関する相談に応じ、実際にもさまざまな家族のための信託の公正証書を作成している。この実務において、信託は、相続や遺言に代わる制度として、また後見制度を補完する制度として大きく動き出しているのである。"民事信託の分野でも高齢社会の到来を背景に後見的な財産管理や遺産承継を目的とする家族信託への期待が高まっている" この家族信託についての説明は、一般社団法人信託協会のホームページの「信託新世紀の始まり-新しい信託法の制定」の中での記述である。信託は、そもそもは財産の管理制度であるが、上記説明にもあるように、家族信託にあっては、遺言に代替して相続財産を円滑に承継させる「遺産承継(家産承継)」の仕組みを有し、また後見制度を補完しあるいはこれに一部代わる「後見的な財産管理」の制度なのである。この家族信託の多くは、信託される財産が遺贈や贈与と同様の形で給付されたり承継される仕組みになっている。また、信託は、認知症高齢者の「配偶者なき後の問題」や障害をもつお子さんの「親なき後の問題」を解決する役割を担う、「財産管理を安心して託せる」制度なのである。この「財産管理を安心して託せる」というフレーズはしがき

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