全訂 新しい家族信託 (試し読み)
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xは、成年後見制度でもそのまま用いられているところであり(法務省民事局のパンフレット「知って安心 成年後見制度 成年後見登記」の表紙には、「知的障害を持つわが子。親の私達が死んだ後も子供の生活・財産管理を安心して託せます。」とある。)、信託はまさに後見制度に代わる機能も有しているのである。 我が国の信託制度は、90年の歴史があるが、家族信託(ファミリートラスト)として、信託が活用できるようになったのは、平成19年9月に改正された新信託法の施行によってである。この5年余りの間に、法律家や税務の専門家によって家族のために活用できる信託の仕組みや実際の活用方法、さらには課税問題について研究検討がなされてきた。そして、ここにきて信託は、実務の中で、本人やその家族の生活に必要な支援を行い、さらには大事な財産を確実に大切な人に引き継ぐという、相続や遺言に代わるものとして、また後見制度を補いあるいはこれに一部代替するものとして活用が始まったのである。 家族信託は、その仕組みなどからして、専門的な知識を有する人によって創造(新しく「プロデュース」)する作業が必要である。それは、信託を必要とする人のために、確かな目的を立ててこれが確実に実現できる仕組みを企画し、信託を設定する信託行為の中に組み込む(「カスタムメイド」する)ことが必要なのである。 家族信託をプロデュースする人は、もちろん信託によって何ができるか、またそれを実現するためのスキームはいかなるものか、リスクがあるとすればそれは何かなどを知悉している必要がある。本書は、このことに焦点(ただし、税務関係は注意喚起にとどめる。)を当てて、筆者が相談を受けた具体的事例を踏まえて説明し、プロデュースする人(信託の創造の担い手)やアドバイスするファイナンシャルプランナー(FP)、さらにはこの制度を実際に活用したい方に役立ってはしがき

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