2 目 的2 はじめに 法律相談は,弁護士が事件活動(法律事務)をする多くの場合,そのきっかけとなる。 弁護士が事件を受任し事件活動を行う場合,刑事の国選弁護事件や官公署からの委嘱によるものを別にすれば,大多数の事件活動は,法律相談から始まる。その意味で,法律相談は,弁護士の事件活動の端緒となる。事件活動は,法律相談の段階で既に始まっているといってよい。このマニュアルは,法律相談から事件の受任に向かう場合,弁護士がどのような点に留意すべきであるのかについて,様々な事例を挙げて説明している。 しかし,法律相談を受けるケースの多くは,弁護士がその事案を法律的な観点から整理し,その事案において相談者がどのように対応すべきかについての説明をすれば,相談者が自ら対応し,問題解決に当たることが可能である。今日,相談者自身による問題解決への対応についてのアドバイスをするという法律相談の役割・機能は,ますます重要になってきている。 弁護士登録をして間もない弁護士は,先輩弁護士の仕事を見よう見まねで覚え,自分なりのスタイルを創っていくというのが,これまで多く行われてきた弁護士の業務習得のスタイルだった。司法修習の期間が2年間あり,その後イソ弁として3年間くらい修行する中で自分なりの業務スタイルを創っていけばよい時代には,それで良かったのかもしれない。今日では,新司法試験に合格した司法修習生の修習期間は1年間となり,短縮されている。新司法試験合格者の実務修習は各クールが2か月程度であり,その間に事件の流れを追いながら実務を体験することは困難になっている。また,弁護士業務の専門化の進展に伴い,登録後の業務が最初から特定の専門領域に限定され,一般民事事件の法律相談を経験することがほとんど無いという人も多くなってきている。 本書は,このような時代にあって,弁護士の職務の基本となる法律相談を総合的に捉え直し,弁護士としての基本的な技能の習得に役立つものをマニュアル化したものである。それとともに,(将来)法律実務に携わろうとする人,様々な相談を受ける立場の人にとっても参考になるよう整理した。 マニュアルとはいえ,主として一般民事事件を対象としつつ法律相談の全般
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