13_弁仕
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検討 2-3 「詐欺」という整理の仕方10  第1 法律相談とは何か,相談者は何を求めて法律相談に来るのかを理解するのかと考えその内容を説明しかかったが,そうでもないようだった。 さらに,親戚の者の所有する物件が競売で第三者の手に渡ることを任意売却の方法で回避することが可能であるのかどうかを知りたいのであろうかと考え,担保権者の同意を得て任意売却する場合のことを説明しかかったが,そのことを知りたいのでもないようだった。 「(この事実関係の中で)どういう点をご相談になりたいのですか。」と尋ねたが,あまり言いたくないという風情で,回答がなかった。 結局,競売物件について任意売買をする場合の一般的なやり方と担保抹消の方法,任意弁済により競売を取り下げてもらう場合の留意点を一般論として説明し,相談を終了した。 この相談は,相談者自身の債権,担保権,所有物件についての相談ではなく,身近な誰かの法律問題を自分の問題と称して法律相談に訪れたのではないかと推測された。 資金を出資したり貸し付けたのに返してくれない(配当金が支払われない)という事実があったときに,初心者である弁護士は,それを相手方から依頼者(相談者)に対する詐欺として捉えることが多い。 確かに,ある人から他人へお金が動く場合に,多少なりとも誇張した話が⑵ 依頼者の求めることを法律問題として整理し,その解決に向けた手立てを検討し,アドバイスをすることア 法律問題としての整理の仕方 具体的な事案を法律問題として整理する場合,考えられる法律上の権利義務を相手方との関係で整理しつつ,時系列で見るとき法律関係は変化してきているのかどうか,相談者がその事案をどうしたいと考えているのか,解決のための方策や手続はどのようなものかを考えつつ整理していく。 ある事案を法律問題として整理する仕方は,普通は,何通りもある。どういう整理の仕方をするのかについて,弁護士としての力量が問われる。

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