第2版 弁護士・社労士・税理士が書いた Q&A 労働事件と労働保険・社会保険・税金
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i「柔軟な働き方」の行方~監修に代えて~厚労省の「柔軟な働き方に関する検討会」は2017年12月25日,同年10月3日以来6回行われた会合の検討結果を公表しました。そこではテレワーク,副業・兼業が取り上げられています。テレワークは,在宅勤務,サテライトオフィス勤務,モバイル勤務などがあり,時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であり,子育てや介護と仕事の両立が可能となるとしています。雇用型テレワークについては「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」が,自営型テレワークについては「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」が策定されています。副業・兼業については,年々希望する労働者が増加していますが,多くの企業はこれを認めていない現状にあるため,労働者が主体的に自らの働き方を考え,選択できるよう,副業・兼業を促進することが重要だとされています。また,副業・兼業を希望する労働者については,長時間労働,企業への労務提供上の支障や企業秘密の漏洩等を招かないよう留意しつつ,雇用されない働き方も含め,その希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境を整備することが重要であるとされています。働く側の視点に立ってこうした「柔軟な働き方」をみると,テレワークは長時間労働につながるのではないか,家庭と仕事が両立せず結果として双方とも所期の目的を達成せずに終わるのではないか(イギリスのケン・ローチ監督「家族を想うとき」が思い出される),また,特に雇用によらない自営型テレワークや副業・兼業は労働災害等を含む労働保護法制の埒外となり,「柔軟」とはいいながら結果的に受注した仕事のノルマと納期に拘束されることになってしまうのではないかという危惧があります。2019年6月の閣議決定「成長戦略実行計画」では,「デジタル・プラットフォーム企業」と利用者の間の取引を推進するためのルールの整備が必要だとされていますが,そこで働く人は労働契約上の労働者といえるかどうかが問題となります。2016年10月28日,ロンドンの雇用審判所は,ウーバー社が独立事業者と扱ってきたタクシードライバーをウーバーの従業員であるとの「柔軟な働き方」の行方~監修に代えて~

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