ii「柔軟な働き方」の行方~監修に代えて~弁護士 中島 光孝監修者を代表して 判断をしました。また,2020年3月4日,フランスの破毀院(最高裁判所)は,ウーバーの元ドライバーは従業員とみなすべきであるとの判断をしました。日本ではプラットフォーム企業のもとで働く人が「労働者」として労働保護法制の適用対象となるのかどうかがこれから問題になります。柔軟な働き方は,労災保険や雇用保険等の仕組みも変えていくことになります。2020年3月31日成立の改正労働者災害補償保険法には,「複数事業労働者」という概念が登場しています。これは「事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者」と定義されています。社会保険については,「二以上事業所勤務届」を年金事務所に届け出て,複数の勤務先の報酬額を合算した額によって標準報酬月額を算定していましたが,労災保険についても,保険給付を行う場合の給付基礎日額をどのように算定するかを定める必要が生じたためです。柔軟な働き方は,これまでの労働保護法制をどこまで及ぼすのかという問題と保険・年金のどこをどのように変えていくのかという問題を抱えながら,紆余曲折を経て広がっていくのでしょうが,100年を超える労働保護法制の拡充の歴史を無にしない知恵が望まれます。 2020年5月
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