デジタル証拠の法律実務Q&A
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Q1デジタル証拠とは何かA1 「デジタル証拠」とは、デジタルデータによって組成される証拠をいいます。事実認定の心証を得させるための資料としてのデジタルデータを考える概念であり、記録媒体とは区別されなければなりません。しかしながら、我が国において、証拠としての情報という概念はないので、どのように位置づけるかという問題があります。 本書の題名は「デジタル証拠の法律実務」です。しかしながら、この「デジタル証拠」という用語は、日本の法律実務では、いまだ必ずしも一般的ではありません。そこで、本書では、まず最初に、「デジタル証拠」という用語の定義を検討していくことにします。 この点、日本よりも議論が進んでいるアメリカにおいては、Q50で紹介するデジタル・フォレンジックスの標準化の動きに伴い、デジタル証拠の科学的作業部会(SWGDE)が「デジタル証拠(Digital Evidence)」を「デジタル形式によって保存又は伝達される証明力(probative value)を有する全ての情報」と定義しています1。また、1995年にアメリカでコンピュータの調査とコンピュータ・フォレンジックスの問題について情報交換する国際フォーラム機関として設立されたIOCE(International Organi-zation on Computer evidence)は、「バイナリ形式2で保存若しくは送信され第1章 デジタル証拠とは何か 1  Scientific Working Group on Digital Evidence (SWGDE) and International Organiza-tion on Digital Evidence (IOCE) (April 2000). “Digital Evidence: Standards and Prin-ciples”. Forensic Science Communications 2 ⑵. available at http://www.fbi.gov/about-us/lab/forensic-science-communications/fsc/april2000/swgde.htm/ 2  バイナリ(binary)形式とは、ここではデータが0と1の2進数で表現されていることを指し、デジタルデータと同じことを表現しています。1 「デジタル証拠」とは何か 「デジタル証拠」とは何でしょうか?

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