Q1 デジタル証拠とは何か6 このような「データ」や「情報」の構造から考察した場合、裁判において、裁判官に対して立証活動を行って事実認定の心証を得るという行為は、どのように位置づけられるのでしょうか。 裁判官がある物体を証拠として取り調べるとき、目やその他の人体機関によって、記載形式、記載内容、色、形など、物体の種々の要素などのデータを取得し、立証の対象となる事実があったかどうか、そのときに事実を認識していたか、事実の存在について合理的な疑いがあるかなど、脳内で一定の判断をなすことになります。このうち、五感によって取り調べることができる有形物は、証拠方法といいます。この証拠方法の取調べによって感得された内容が証拠資料です。弁論の全趣旨(民事の場合)を加えた証拠原因が、心証形成の原因となり(証拠原因)、判決の基礎が確定されるのです。この過程は上記の情報に関する構造に照らすと、個々のデータが情報として処理され、最終的に事実認定といわれる段階に達する、いわば、ひとつの知恵(wisdom)に至るプロセスであると考えることができます。 最後に、日本の裁判における証拠とデジタルデータの関係について考察しましょう。 日本の裁判においては、五感によって取調べをする対象を「証拠方法」といい、それが有形物であることが当然の前提とされています。そして、この証拠方法は、民事、刑事で違いはありますが、基本的には、取調べの対象が人である人証、物体である物証に区別され、さらに、物証は文書と検証物に区別されています。 デジタルデータも、それ自体は、有形物に記録されていることから、証拠方法となって、取調べの対象になっていると説明されます。しかし、従前のアナログによる証拠では、有形物自体が表現であり、有形物を離れて5 証拠と情報・データ6 証拠方法とデジタルデータ
元のページ ../index.html#30