データ図表4第1章 デジタル証拠とは何か存在する表現は考えられませんでしたが、デジタルデータは、媒体としての有形物とは別個に表現として独立して成立しているという特徴があります。 上の図(図表4)は、データが、どのように裁判官の心証に影響するかを示しています。ひとつの法的な事象をとりまくデータが、裁判の過程から処理されるときに、それらは、証拠資料となります。それらの証拠資料から、証拠が得られ、事実認定がなされます。 このように考えたとき、そのデータが保存・伝達される形式が、有形物に表現として記録されているか(有形物自体の形状等も含む。)、何らかの媒体にデジタル形式で記録されているデジタルデータであるかに本質的な違いはないことに気がつきます。そして、有形物を前提として組み立てられている従前の訴訟法の規定で十分に対応することができるのかという問題点が自ずと想起されます。 一例として、刑事事件に関する、捜索・差押え対象物の特定の問題を挙げることができるでしょう。憲法35条の規定(「住居、書類及び所持品」、「押収する物」)やこれを受けた刑事訴訟法の規定(同法99条1項、219条等)では、「差し押さえるべき物」と明記されており、従前、捜索・差押7
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