デジタル証拠の法律実務Q&A
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はしがき インターネットを中心にした情報技術がもたらした変革は、それまでの社会活動の在り方を大きく変えてしまいました。この情報技術の革命は、現在も、進行中であるといえるでしょう。しかしながら、我が国を眺めてみるとき、紛争を正義の下に解決するという司法の世界は、世の中の情報技術革命に、キャッチアップできているのだろうか、という懸念を抱かざるをえません。本来であれば、法に携わる者は、情報技術がもたらす変革が社会との軋轢を生む前に、その軋轢を予測し、時代に応じた法的枠組を提案し、社会の安定した発展の路を示すべきであるともいえるでしょう。しかしながら、現状を見る限り、我が国の司法は、この情報技術社会の急速な発展に追い付いているとは言い難い状況にあると思われます。 本書は、このような状況を踏まえ、情報技術の変革が、司法の世界にどのような影響を与えているのかを、多数の裁判例を参照しつつ分析するとともに、具体的な法律実務の在り方を解説することを試みたものです。この作業にあたって心掛けたことは、法と技術の橋渡しをしながら解説しようということでした。幸いにして、新進気鋭の弁護士の中には、前職で一線の技術者であった者などIT技術に精通した者が多数おり、技術サービス提供会社の方々の援助も得て本書を作成することができました。本書の原稿作成に携わった弁護士の中心は、第一東京弁護士会総合法律研究所のIT法研究部会に所属する弁護士たちです。法と技術の橋渡しという高い志をもった本書の執筆作業は、困難なことも多く、私たちにとってチャレンジでもありました。私たちは、ここに、本書でもって、そのチャレンジの成果を世に問うことができることを誇りに思います。 第一東京弁護士会の先達の弁護士たちは、世の中が大きく変わるときに、高い志を下に率先して新しい途を示してきました。そもそも、結成のゆえんからして、そうでしたし、戦後の混乱から資本主義社会における労働法を確立するのにも大きな役割を果たしてきました。また、新民事訴訟法制定の際に、「訴訟に納期を」という問題提起をしましたし、弁護士業vはしがき

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