家事事件における保全執行履行確保の実務
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第1部家事事件における保全用の算定方式と算定表の提案」家月55巻7号155頁)が活用されています。具体的には,通常の衣食住の費用の他に,子の教育費,子の出産費用,医療費,そのほか当該婚姻家族の社会的地位にふさわしい婚姻費や交際費も含まれます。最近は簡易算定表(「簡易迅速な養育費等の算定を目指して―養育費・婚姻費また,婚姻費用の分担の調停あるいは審判手続による解決には一定の時間がかかりますので,緊急性がある場合には,不十分です。Q1 婚姻費用の保全372 婚姻費用の請求手続⑴ 別居時に,別居中の婚姻費用を協議で定めることもできます。⑵ 本件のように,夫が家を出て行ってしまい,どこに住んでいるかわからない場合には,当事者間で協議で決められる見込みがないので,婚姻費用の分担について調停もしくは審判を申し立てることが考えられます。しかし,婚姻費用の分担については,調停では,相手方の住所地において申し立てるべきですが,相手方の住所がわからない場合には,調停の申立てが困難となります。3 早急に生活費を確保する必要性がある場合について本ケースのように,早急に生活費を確保する必要性がある場合には,婚姻費用の分担の審判を申し立てるのと同時に,婚姻費用の分担の審判を本案として,婚姻費用の分担の保全処分(婚姻費用の仮払いの仮処分)を申し立てる解 説1 婚姻費用とは婚姻費用とは,夫婦と未成熟子によって構成される家族がその資産・収入・社会的地位等に応じた通常の社会生活を継続するのに必要な費用(大阪高決昭和33年6月19日家月10巻11号53頁)とされています。

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