4 婚姻費用の分担の保全処分について⑴ 管 轄ことが考えられます(家事157条1項2号)。保全処分の管轄裁判所は,本案の調停あるいは審判が係属している家庭裁判所です(家事105条1項)。婚姻費用分担調停の場合は,原則として相手方の住所地の家庭裁判所が管轄裁判所となり(家事245条1項),審判の場合は,夫(相手方)もしくは妻(申立人)の住所地を管轄する家庭裁判所となります(家事150条3号)。本ケースの場合は,夫(相手方)の住所が不明で調停の管轄を決めることが難しいと思われますので,妻(申立人)の住所地を管轄する家庭裁判所に審判を申し立てることになると思われます。⑵ 保全申立ての要件審判前の保全処分の場合,婚姻費用の分担の審判あるいは調停が家庭裁判所で係属していることが前提となります。家事事件手続法157条1項では,家庭裁判所(家事105条2項の場合にあっては,高等裁判所)は,審判または調停の申立てがあった場合において,強制執行を保全し,または子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは,当該申立てをした者の申立てにより,当該事項についての審判を本案とする仮差押え,仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができると定めています。そして,157条1項が定めている事項に,婚姻費用の分担に関する処分も含まれます(家事157条1項2号)。本ケースでは,上記のとおり,夫(相手方)の住所地が不明で調停の管轄を決めることが難しいと思われますので,妻(申立人)の住所地を管轄する家庭裁判所に審判を申し立て,婚姻費用の分担の保全処分(婚姻費用の仮払いの仮処分)を申し立てることになります。イ 保全の要件保全の要件は,本案認容の蓋然性と保全の必要性です。家事事件手続法第2章 保全各論38ア 本案の係属
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