「第3編 生活保護行政の課題」では,重要であるにもかかわらずあまり整理されず,トラブルが生じやすいと考えられる課題について検討を行いました。「現在進行形」の問題もあり解決が難しく問題の所在を明らかにしただけのものもあります。【生活保護行政のコツ】本書執筆に当たり,私見では生活保護法の趣旨からは疑問と考えられる通知類の評価について悩みました。この扱いをどのようにするのかで行きつ戻りつしましたが,本書をケースワーカーを中心とした現場の人たちが活用することを考え, 通知の変遷や厚生労働省(厚生省) による趣旨を中心に据えることとしました。その上で若干のコメント,問題点の指摘等を行っています。筆者がケースワーカーになった当初とまどったのは,通知の扱いについてでした。要保護者の状況は様々であり,通知が要保護者の状況にストレートに合致するものだけではなく,該当通知と思われるものを適用すると要保護者の実情に合わない結果が生じることもあります。このことについてしばらく悩み, 考えましたが『生活保護手帳 別冊問答集』(1979年版) 掲載の厚生省保護課長名の「はじめに」 に回答がありました。そこでは,「生々しい現実の事例にこれを機械的にあてはめ性急な結論を導くことは厳に慎まなければならない」「個々のケースのかかえている問題の答えは,まさに生きたケースが持っている具体的事実のなかからしか見出すことのできないものである」「具体的な事例について諸々の条件を念入りに分析し,委ねられた権限の中で真に妥当な決定をしなければならない」というものでした(現在も文言は変わっていますが趣旨は同じと思います。)。つまり,生活保護手帳や別冊問答集に「使われる」のではなく,生活保護法の理念に基づき要保護者の実態に合わせて「使いこなす」ことが生活保護行政のコツなのです。そのためには,『生活保護手帳』や各種通知をきちんと読むことを先輩から教わりました。このことが理解できてからケースワーカーの仕事は,厳しいことはあっても人を助けることのできるやり甲斐のある仕事と感じるようになりました。これが,生活保護行政に携わる皆さんに本書で伝えたいことの1つです。『生活保護手帳』を理解する上で本書が一助になれば幸いです。viii初版 はじめに
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