生活保護は憲法で保障された国民の生存権の保障を具体化したものです。したがって,国民に対する国家の責任として実施され,その運用は全国統一とする必要があることから,保護の可否の判断や保護費の金額などの多くの部分が法定受託事務とされています。このため,生活保護行政は,生活保護法を基に厚生労働省から各種通知が福祉事務所に示されることで,その実務が行われることになります。被保護者に直接関わるケースワーカーは,生活保護の可否や保護費の程度,保護の方法などについての判断が必要であることから,保護の実施に当たっては,抽象的な法の条文よりも運用についての具体的な記述のあるこれらの通知を中心に参照することが多いことになります。これらの通知は「実施要領」と呼ばれています。このため,生活保護行政を実際に担う福祉事務所の現場では,これら通知が整理された法令通知集である『生活保護手帳』や問答による解釈集である『生活保護手帳 別冊問答集』が保護の実施の必携とされています。(第1編第3章第2参照)。また, 地方自治体や福祉事務所によっては,保護の決定に当たり判断をより早く簡潔に行うために「判断の申合せ」や「福祉事務所内の生活保護運用ルール」を決め,それに沿って生活保護行政を実施しているところもあります。これらは,たびたび生じる類似の事例についての対応を整理・統一化し,ケースワーカーごとに被保護者への異なる対応を防ぐことを目的としたものや,オーバーワークともいえるケースワーカーや査察指導員が,被保護者からの相談に対して迅速に応えるマニュアルであることもあり,必ずしも否定されるものではないと思います。しかし, ここで問題なのは法の理解が不十分なために,実施要領の理解が表面的になり,具体的に生じている被保護者の課題に応えることができない場合や,中には「福祉事務所内の生活保護運用ルール」が判断の簡易さを求めるあまり,法から逸脱することが生じる場合です。このようなことは,要保護者で42第1 実施要領,通知と法第1章 なぜ原理を学ぶのか第2編 生活保護の原理
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