事例1 取締役の過半数の掌握 5⑴ 取締役の選任・解任の定足数と決議要件 取締役を選任又は解任する株主総会の決議は,議決権の過半数を有する株主が出席し,出席した株主の議決権の過半数をもって行うが,定款でこの定足数と決議要件を加重することができる(会社341条)。対立する取締役を解任しようとする場合には,特に決議要件が加重されていないかを確認することが重要である。⑵ 取締役の員数 取締役会設置会社において,取締役は3人以上でなければならない(会社331条5項)。定款で取締役の最低数を4名以上に定めることができ,最高数を定めることもできる。 株主総会に当たり複数名の取締役の選任を議案として提出する場合は,この定数にも留意する必要がある。① 取締役の員数の最高限が影響するケース 定款に取締役の員数を最大で4名とする定めがあり,Aほか3名の任期満了に伴い株主XがE,F,G,Hの4名を候補者とする取締役選任の件を議案として提案し,会社側はI,J,K,Lの4名を候補者とする取締役選任の件を議案とした場合,株主提案に賛成してXに委任状を提出した株主は,会社提案に係る候補者(I,J,K,L)については賛成の議決権を行使する余地がないので,会社提案については賛成しない趣旨でXに対して議決権行使の代理権の授与を行ったと解される(東京地判平成19年12月6日判タ1258号69頁)。よることもできる(会社939条1項3号)。いずれの場合も,貸借対照表が表示されるウェブサイトのアドレスは登記事項である(会社911条3項26号・28号イ)。1−3 定款でどのような事項を調査すべきか。
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