経営権争奪紛争の法律と実務Q&A
37/52

事例1 取締役の過半数の掌握  7⑶ 取締役を株主に限る旨の定めがないか 非公開会社においては,取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができる(会社331条2項ただし書)。定款にこの定めがある場合,自己と親しい者を取締役にして会社の支配権を掌握しようとするのであれば,取締役は株主の中から選ばなければならない。⑷ 株主総会に出席できる代理人資格に制限はないか 自らは株主総会に出席せず代理人により議決権を行使する場合や,自らは過半数の株式を所有していないため他の株主から議決権行使の委任状を取り付ける場合には,株主総会に出席できる代理人資格に制限がないかを確認することが必要である。 代理人の資格を株主に限定する定めがあることが多いので,特に留意すべきである。定款にこのような定めがある場合には,株主を代理人としなければならない。 ただし,株主が法人の場合,株主ではない従業員に議決権を代理行使させることは可能である。当該従業員は会社の指揮命令に従って議決権を行使するので「株主総会が株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し,会社の利益を保護する趣旨」に反することはないからである(最二小判昭和51年12月24日民集30巻11号1076頁)。 株主ではない弁護士を代理人とすることができるかについては,裁判例が分かれている。弁護士が本人たる株主の意図に反する行動をとることは通常考えられないから,株主総会を混乱させるおそれがあるとは一般的には認め難いとして,弁護士による議決権の代理行使を認めなかったことは違法であるとした裁判例(神戸地尼崎支判平成12年3月28日判タ1028号288頁)と,非株主代理人による権利行使の可否について,混乱のおそれがあるか否かといった実質的基準を持ち込むことは弊害が多いから,弁護士による株主権代理行使を拒否しても違法とはならないとした裁判例(宮崎地判平成14年4月25日金判1159号43頁,東京高判平成22年11月24日金判1389号8頁,結論同旨東京地判昭和57年1月26日判時1052号123頁)がある。 会社の支配権が争われている状況下で,株主が弁護士を代理人として株主

元のページ  ../index.html#37

このブックを見る