推薦のことば i 経営権争奪の紛争は,どのようなときに起こるのか。 上場企業であれば,有望な会社の株式は公開買付けによって買い進められる。非上場企業の場合でも,株主から相対交渉等により株式を買い受ける形で,経営権の奪取が行われる。 同族会社の支配株主に相続が起こったときも,深刻な紛争になることが少なくない。あらかじめ後継者を決めていて計画的に株式の移転を進めていても,思いがけずに急逝してしまうこともあるし,そのような準備をしていないときは猶更である。 本書は,このような紛争について,経営権奪取を狙う「攻める側」と,今まで通りに経営権を維持しようとする「守る側」の双方に役立つように,紛争への対処法を極めて実務的な眼で解説している。 本書の第1章は,「事前調査」の章で,攻める側が相手に悟られずに入手できる登記簿の閲覧から解説が始まっている。会社の登記からどのような事項が分かるのか。発行済み株式数や発行可能株式数,種類株式が発行されているか否か,取締役の氏名などは分かるが,誰が株主で,それぞれの持株数はどうかなどは分からない。株主名と持株数を知るためには株主名簿の閲覧を会社に請求するしかないのであろうか。 そうではない。商業登記規則の改正により,平成28年10月以降に取締役就任等の登記申請がされた場合には,株主総会議事録だけでなく,上位10名又は上位3分の2に達するまでの株主の氏名・住所・持株数を記載した株主リストの添付が必要になった。したがって,利害関係者は登記申請の添付書類を閲覧することによってこのような情報を入手することができるのである。 本書には,このような最新の調査手段についても漏れなく紹介されている。 第2章は「株主権(支配権)をめぐる争い」の章である。推薦のことば
元のページ ../index.html#5